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S&Sのオススメの書籍

宇宙ビジネスの衝撃

宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ

★★

今年に入ってから、イーロン・マスク率いるスペースXが立て続けにロケットの再使用に成功し、さらには年内の有人飛行も予定しているなど、日本でも米国の民間企業による宇宙開発の報道は増えてきています。

宇宙ビジネスが注目される最大の理由は登場人物が大物ぞろいであることです。民間企業の有人宇宙飛行については、上記のイーロン・マスクに現在世界一の富豪であるアマゾンの創業者ジェフ・ベゾス、ヴァージン・グループの創業者リチャード・ブランソンといういずれも強烈なキャラクターをした3人のビリオネアがしのぎを削っています。

それ以外にも、グーグルの創業者であるラリー・ペイジや映画監督ジェームズ・キャメロンが小惑星の資源探査企業であるプラネタリー・リソーシーズに巨額の出資をしたり、イーロン・マスクは最終的に2040年には100万人単位の火星移住を目指していたりするなど刺激的なエピソードが満載です。

著者自身がこうしたビジネスに関わっているわけではないので、本書の情報は広く公開されているものが中心ですが、米国を中心とした民間企業がどのように宇宙開発を主導し始めているのか、現状を把握するのには適した内容となっています。

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ブラック・エッジ

ブラックエッジ ――資産1兆円の男、スティーブ・コーエン物語 (ウィザードブックシリーズ)

レベル3 ★★★★

年に1-2冊、米国のノンフィクションのレベルはやはり凄いなと思わせる金融分野の良書に出会いますが、本書はまさにそれに値する重厚な内容となっています。米国史上最大の罰金を支払うことで決着した大手ヘッジファンドSACのインサイダー取引疑惑について、このファンドの創業者である米国屈指の大富豪スティーブ・コーエンの生い立ちにまでさかのぼって、詳細かつ時系列で分かりやすくまとめられています。

あまり恵まれない環境で育ったスティーブ・コーエンはハングリー精神と類稀なトレーダーとしての才能を活かして、世界屈指の巨大ヘッジファンドSACを築き上げます。しかし、そのトレーディング手法には謎が多く、ファンド設立以来年率30%という超ハイリターンをどのように稼ぎ出しているのか、常に疑惑とともに語られてきました。

本書を読むとスティーブ・コーエンのトレーダーとしての優秀さは疑う余地がないとともに、明らかにファーム全体にインサイダー取引が蔓延したことも良く分かります。ヘッジファンド業界では、指数に対する超過リターンを産み出す差別化ポイントをエッジと呼びますが、本書のタイトルにあるようにSACでは多くのブラックなエッジがハイリターンに貢献したことは疑いの余地がありません。

ただ、膨大な客観的な事実の積み上げだけでは大物を罪に問えないのが、米国の金融界の現状で、結局スティーブ・コーエンもファンドとしては巨額の罰金を支払いましたが、個人としては罪に問われることはありませんでした。SACは外部資金を全て返済しなければならなかったものの2年のペナルティ期間を経て、今年には再び外部資金を集めて新たなヘッジファンドの運用に乗り出しています。

どのようにスティーブ・コーエンが罪を逃れて、部下しか有罪とならなかったのか詳細な経緯は本書をぜひ読んでほしいですが、ファンドマネージャーとしてだけではなく今や世界的なアートコレクターとして社交界をにぎわせるコーエンの現在の姿と、彼を追いかけたFBIやSECなど政府組織の担当者の多くが今や金融業界で高報酬を得ているという結末を見ると暗澹たる気持ちとなります。

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アマゾン・エフェクト

  • 2018年4月13日 8:00 AM
  • ★★

アマゾンエフェクト!  ―「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか

★★

米国の株式市場はここ数年、FAMGA(フェイスブック・アマゾン・マイクロソフト・グーグル・アップル)と呼ばれるメガテック企業5社が上位を占めていますが、この5社の中でもビジネスの成長ペースと今後のポテンシャルで最も高く評価されているのがアマゾンです。米国ではTo be Amazonedという言葉が、アマゾンの進出によってある業界が根こそぎ奪われるという意味でつかわれるほどの存在感を持っています。

セブンイレブンのCIOとしてオンラインチャネルの強化を推進する立場として、そのアマゾンと対峙する立場にあった著者が、アマゾンのビジネスモデルの凄みとそれに対峙する日本の小売企業の厳しさについて書いた本です。これまでもアマゾンについての書籍は色々と読んできましたが競合企業の立場からの視点は初めてで、アマゾンの業界構造を根こそぎ変えてしまう恐ろしさについて新鮮な切り口で理解できました。

著者のオンライン強化を含めたオムニチャンネルに関する取り組みは、父親で長くセブンイレブンの会長を務めた鈴木氏の退任により後退してしまい、決済が不要なAmazon Goの立ち上げやホールフーズの買収などで実店舗での取り組みを加速させるアマゾンに対して、国内では最強の小売りと言えるセブンイレブンについても厳しい戦いを強いられそうです。本書の特に後半はセブンイレブンの内部対立で、オムニチャンネルの取り組みが思うように進んでいないという記述が多いことはとても残念に感じました。

日本の小売全体がTo be Amazonedされるのを防ぐ手立てはあるのか、小売企業に残された時間は少ないと読後に強く感じました。

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世界を手にした「反逆の起業家」の野望

ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望

★★★★

いかついタイトルがついていますが、ペイパルの創業者として財をなし、その後は投資家としてフェイスブックやパランティア、Airbnbといったメガスタートアップに初期から出資したことで世界的な大富豪となったピーター・ティールの初めての本格的な伝記です。

ピーター・ティールはフェイスブックにリンクドイン、You Tubeなど今やグローバルでプラットフォームとなっている企業を次々に生み出したペイパルマフィアの中心人物として知られています。その投資法は本書のタイトルにもあるように思い切った逆張りで知られています。

投資手法だけでなく、反トランプ一色のシリコンバレーにおいて早くからトランプ支持を表明して、トランプ政権に深く喰いこみ、政権発足当初にトランプ大統領とジェフ・ベゾスやラリー・ペイジといったIT業界の重鎮たちとのミーティングをアレンジしたことでも存在感を示しました。

イーロン・マスクがペイパルマフィアの表の顔とすれば、ピーター・ティールは逆張り投資家かつリバータリアンで、かつゲイというマイノリティ色が濃いプロファイルで、まさにペイパルマフィアといわれるほど結束の強い起業家集団の中における裏のボスという位置づけが適当でしょう。

本書では、これまであまり世の中に知られていなかったペイパルの創業期の様子や、これまた世界で最も秘密めいたメガスタートアップといわれているデータ解析会社、パランティアをどのように創業したのかなど、ピーター・ティールの凄みが良く分かるエピソードが豊富に盛り込まれています。

ティール自身が書いたビジネスにおける思想書「ゼロ・トゥ・ワン」と合わせて読むと、起業家や投資家としての成功の秘訣が良く見えてくるでしょう。ピーター・ティールはドイツに生まれた人物で、本書のオリジナルはドイツ語で書かれています。とても良い内容なのですが、ドイツ語からの翻訳の為か数字の間違いが随所に目立つことだけが玉に瑕です。

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UPSTARTS

UPSTARTS UberとAirbnbはケタ違いの成功をこう手に入れた

★★★★

今や関連するニュースを見ない日はないほどに世界中で話題を席巻しているシェアリングエコノミーの雄、配車サービスのウーバーと、民泊サービスのエアビーアンドビー(以下エアビー)の創業期からの歩みがまとめられた好著です。両社ともに創業から10年もたたないうちに、ウーバーが企業価値約600億ドル(約6.4兆円)、エアビーが同約300億ドル(約3.2兆円)と、未上場企業の中でグローバルトップ10に入る急成長を遂げています。

ただ、その歩みは紆余曲折の極みでした。どちらも、タクシーとホテル業界という歴史が非常に古く、さらに政治的な影響力の強い既得権益ホルダーと正面から利害がぶつかるために、進出する度に各都市で大きな軋轢を生んできました。いくつかの国や都市では両サービスを全面的に禁じる法規制が新たに制定され、またそこまで規制が強化されなくとも歯止めをかける議論は依然活発に行われています。

しかしながら、いくら規制を強化しようとも、この両サービスを日常的に使っている立場からすると、テクノロジーの発展はとめられず、シェアリングエコノミー拡大の流れは止められないと確信しています。そのことを示すかのように、直近ではオフィスのシェアリングサービスであるウィワークが、この両社を企業価値で抜き去る勢いで成長しています。

本書を読んで感じたことは、アメリカというシステムの途轍もない強さです。規制側も何とか新たなチャンスを活かして稼ぐにはという意識に満ちていて、実際に規制当局から両社に転身して活躍している人物が何人も出てきます。立場が異なる様々な役者が入れ替わりながら、ビジネスの成長という1点で合致して猛烈な勢いで前に進んでいくアメリカの凄みが存分に味わえます。

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20アンダ―20

20 under 20 答えがない難問に挑むシリコンバレーの人々

★★★

米国を代表する起業家にしてベンチャー投資家であるピーター・ティール氏が始めた、20歳以下の若者が大学には進学せずに起業の道を選ぶのであれば、10万ドル(約1,100万円)を提供するというプログラムの参加者に焦点をあてたノンフィクションです。

このティール・フェローシップというプログラムは米国で大きな話題を呼びましたが、その後の経過については知らなかったので、本書を手に取りました。結論から言うと、何名か成功者は出ているものの参加者の多くは苦戦していて、一部はフェローシップ参加後に改めて大学に進学しなおしたということです。

ただ、ティール・フェローシップもその在り方を軌道修正していて、今では若者中心を対象にしたベンチャーキャピタルよりさらに創業期の企業にフォーカスをあてたスターターに変貌してきていて、この分野で著名なYコンビネーターや500スタートアップと似た組織となっているようです。本書ではティール・フェローシップだけでなく、こうしたスターターを始めシリコンバレーの若手起業家がどのようなノリで、ビジネスに取り組んでいるのか詳しく紹介されています。

やや対象があちこちに飛んで散漫な印象も持ちますが、シリコンバレーでの起業活動に関心がある人は読んで損がない本です。

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すべての仕事を3分で終わらせる

すべての仕事を3分で終わらせる――外資系リーゼントマネジャーの仕事圧縮術

★★★

著者の岡田さんとはシンガポールで交流があり、彼の初めての著作ということで手に取ってみました。岡田さんは年中暑いシンガポールにもかかわらず、いつも巨大なリーゼントに黒い皮のコートといういでたちで、シンガポールの日本人では知らぬものが居ないほどの存在感をはなっていますが、本書の内容はそれに反して、極めて王道かつ真っ当な仕事術が展開されています。

著者はアクセンチュア・デロイト・マイクロソフトという外資系のエクセレントカンパニーで20年以上活躍してきた実績を持ちますが、こうした外資系のトップ企業と国内企業の生産性の差を、仕事を行う上での意識の違いに求めています。

部下に残業をさせて2度とこういうことを許さないと言われてから、いかに仕事を効率的かつインパクトを残せるように行うのか、著者が仕事を普段行う上で意識しているポイントがクリアにまとまっています。「完璧よりもスピードを重視」、「徹底的に無駄を省く」、「メールには即レス」、「なるべく多くの人をレバレッジする」という著者の仕事術には私もコンサルやファンド時代に意識していた内容と合致するものばかりで、とても納得感がありました。

外資系企業で働いたことがある人であれば、自然と意識することも多いでしょうが、無駄な残業がはびこり先進主要国でも生産性が最低レベルに低迷している日本では、目うろこの点が多いと思います。特に、これから自分の仕事スタイルを築いていく若い世代に学びが多いビジネススキルが満載の本です。

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サピエンス全史

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

★★★★

人類が種として確立してから現代にいたるまでの250万年の歩みを縦横無尽に語った壮大なスケールの作品で、世界中のリーダーから大絶賛されたことでベストセラーとなっています。

移動の連続で中々こうした大著を読み切るタイミングがなかったのですが、日本に年末年始に滞在した時を活かして読み切りました。各界で絶賛されていたことで期待値は相当に高かったのですが、その期待にたがわない示唆に富んだ内容でした。

様々な旧人類の中からホモサピエンスが生き残ったのはイメージを共有する能力であった、人類の数を大幅に増やすことを可能にした農業革命は個々人の生活レベルを実は大幅に引き下げる負の側面もあったなど、驚愕の事実が次々と豊富なデータや事例をもとに語られていて、読んでいてさらに調べたくなる事象が沢山見つかる知的刺激に満ちた作品です。

前半は人類のこれまでの長い歩みについて、後半は現代社会を語る上で欠かせない科学や経済について記述が割かれています。本書の最終章は「神になった動物」ですが、欧米では本書の続編である「ホモデウス」が発売されて、こちらも大きな話題となっています。

ホモサピエンスが種として生き残る原動力となったイメージを共有する力と、AIや遺伝子操作といった最新のテクノロジーが組み合わさった時に、人類はどのような存在となるのかというこちらも途轍もないスケールの作品のようですから、今年9月の日本語版の発売を楽しみに待っています。

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ギリシャ人の物語Ⅲ

ギリシア人の物語III 新しき力

★★★★

ルネッサンスを生き生きと描く著作群で世に知られるようになって、全15冊からなるローマ人の物語で当代随一の歴史エッセイストとしてのポジションを確立した塩野七生さんの最後の長編エッセイです。

塩野さんの作品は十字軍に関する著作を除いてほぼ全て読んできているので、彼女の最後の作品というだけでジンとしながら読み進めましたが、本作ではアレクサンダー大王という人類の歴史でも屈指の傑出した個が登場するので、塩野さんの真骨頂といえる魅力的な個人を軸とした歴史物語が存分に展開されています。

ローマ人の物語の中でも、カエサルの巻が傑出した出来ばえであることは読者の多くの意見が一致するところでしょうが、ギリシャ人の物語の3部作の中でもアレクサンダー大王という存在により本作が最も魅力的という意見がほとんどでしょう。

他の2作でもテミストクレスなど、著者の思い入れが強い人物に関する記述は魅力的でしたが、それ以外は個人名と歴史的な事実の羅列で読みづらい部分も見受けられました。その点では本作の8割方はアレクサンダー大王と、その父フィリッポス二世の記述に割かれていて、まるで映像作品のようにこの親子の鮮やかな会戦シーンが次々と描かれているので、前2作よりはるかにスムーズに読了しました。

それでも、ローマ人の物語と比較すると迫真さに欠けることは否めませんが、80歳という著者の年齢を考えるとここまでの大部を毎年仕上げる気力には脱帽せざるをえません。もう、塩野さんの長編エッセイは読めないので、今年は時間を見つけて彼女の長編作品で唯一読んでいない十字軍物語にチャレンジしたいと考えています。

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世界のエリート投資家は何を考えているのか、何を見て動くのか

世界のエリート投資家は何を見て動くのか: 自分のお金を確実に守り、増やすために (単行本)

レベル3 ★★★★

著者は米国で有名な自己啓発のセミナー講師で、この情報とタイトルを見ると薄っぺらいマネー啓発本かと錯覚しますが、内容は今の金融界を代表する大物たちに著者自らが長時間にわたって取材した内容に基づいた、骨太な投資入門書に仕上がっています。

流石に著名な自己啓発セミナー講師だけあって、大物たちのお金や投資に関する専門的なアドバイス内容が細かい章立てで、かつ平易な言葉でかみ砕かれて説明されているので、こうした投資本をあまり読んだことがない読者にもとっつきやすいでしょう。

ウォーレン・バフェットやレイ・ダリオといった著名投資家だけでなく、格安のインデックス商品を数多く出しているバンガード社の創業者ジョン・C・ボーグルや大手ネット証券の創業者チャールズ・シュワブなど、個人の投資インフラの整備に貢献したサービサー側にも話をきちんと聞いていて、投資の玄人にとっても学びがあります。

惜しむらくは日本語のタイトルで、原題はMoney Master The Gameとシンプルに投資のプロフェッショナルのエッセンスが詰まった書籍であることが伝わる内容になっているのに対して、だらだらと長い割には読者ターゲットが見えず、個人投資家の多くがスルーしてしまうのではないかと懸念しています。

上記のように投資の初心者から上級者までテンポよく、新たな知識が身に着けられる良書ですから、1人でも多くの読者が手に取ることを願っています。

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Shoe Dog

SHOE DOG(シュードッグ)

レベル4 ★★★★

題名を日本語に訳すと「シューズ馬鹿」といったニュアンスで、ナイキの創業者であるフィル・ナイト氏が自ら執筆した伝記です。もちろんここでの馬鹿には、没頭して夢中になっている様子を表す愛すべきニュアンスが込められています。

今やシューズだけでなくスポーツ用品全般においてもナイキは世界最大のプレーヤーとなっていますが、創業は1960年代とアディダスやプーマといった欧州の大手はもちろん、アシックスといった日本のメーカーからもはるか後れを取っていたところからのスタートでした。それどころか、フィル・ナイト氏自身が起業するきかっけになったのは、アシックスの前進であったオニツカタイガーのシューズを日本で見て気に入り、米国の西海岸で販売代理店を任せてもらったところからでした。

その後、アシックスとは決裂してしまいますが、日商岩井が商品の調達だけでなく資金調達などファイナンス面を支えたことで、ナイキが世界的な企業に成長していくなど、ナイキは創業当初からずっと日本と深いかかわりを持っています。日商岩井への感謝の思いは本書でも度々出てきますし、ナイキの本社にある日本庭園には日商岩井という名前が冠されているほどです。

世界的な起業家の自伝というと超人的な才能を持った人物による成功譚というイメージを持つかもしれませんが、本書は全く違うテーストです。本書のほぼ全ての記述は創業前夜から1970年代におけるナイキの黎明期についてで、成り行きで起業することになったナイト氏があらゆるトラブルに見舞われ、のたうちながら一歩一歩前進してきたことが分かる迫真の記述には、こちらも創業前後のことが思い出されて胸が苦しくなるほどでした。

ナイト氏以外もナイキの創業メンバーは、異常な肥満漢や手紙魔、さらには車いすに乗った障害者など、通常の企業では異端とされる人ばかりです。そうした凸凹チームが今の世界的企業を作り上げた事には多くの読者が驚きを感じるでしょう。起業に関心がなくともビジネスパーソンが読めばほとんどの人に学びがある素晴らしい作品です。

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世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)

★★★

最近関心を持っているアートに関する本かと思って手に取ったのですが、内容は欧米のビジネスエリートがアートを鑑賞するなど美意識を鍛える背景についての説明です。著者は元々経営コンサルティング会社で働いていた方ですが、従来の経営コンサルティングの中心だった定量指標に基づいてロジカルな分析を行っていく、サイエンス的な経営は直近では陳腐化していて、起業経営においても美意識に代表されるような感性が重要になってきているというのが本書の一貫したメッセージです。

この主張を強調したいがために、経営コンサルティング会社の組織構造をオウム真理教に例えるなど一部の主張を受け入れられない人もいるでしょうが、基本的なメッセージには私も賛同です。ネットであらゆる情報が瞬時にシェアされて、ロジカルシンキングやフレームワーク分析に代表される経営コンサルティング会社のスキルは世の中に広く知られています。

加えて、データをもとにした分析もAIが発達する中で人間が行うことで高い付加価値を生み出すことはますます困難になっていくでしょう。実際に本書で主張されているトレンドを裏付けるように、マッキンゼーがデザイン会社を買収したり、Airbnbに代表されるようにデザイン専攻の創業者のスタートアップが大成功を収めたりと、ビジネスにおけるアート的な感性がインパクトを持つ事例も出てきています。

もちろん、サイエンス的な要素が一切必要なくなるわけではないですが、日本では未だにあまり意識されないビジネスにおけるアートを美しいと感じることに代表される美意識の重要性を分かりやすく説いています。

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