ホーム > 書評 > ★★★

★★★のアーカイブ

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)

★★★

最近関心を持っているアートに関する本かと思って手に取ったのですが、内容は欧米のビジネスエリートがアートを鑑賞するなど美意識を鍛える背景についての説明です。著者は元々経営コンサルティング会社で働いていた方ですが、従来の経営コンサルティングの中心だった定量指標に基づいてロジカルな分析を行っていく、サイエンス的な経営は直近では陳腐化していて、起業経営においても美意識に代表されるような感性が重要になってきているというのが本書の一貫したメッセージです。

この主張を強調したいがために、経営コンサルティング会社の組織構造をオウム真理教に例えるなど一部の主張を受け入れられない人もいるでしょうが、基本的なメッセージには私も賛同です。ネットであらゆる情報が瞬時にシェアされて、ロジカルシンキングやフレームワーク分析に代表される経営コンサルティング会社のスキルは世の中に広く知られています。

加えて、データをもとにした分析もAIが発達する中で人間が行うことで高い付加価値を生み出すことはますます困難になっていくでしょう。実際に本書で主張されているトレンドを裏付けるように、マッキンゼーがデザイン会社を買収したり、Airbnbに代表されるようにデザイン専攻の創業者のスタートアップが大成功を収めたりと、ビジネスにおけるアート的な感性がインパクトを持つ事例も出てきています。

もちろん、サイエンス的な要素が一切必要なくなるわけではないですが、日本では未だにあまり意識されないビジネスにおけるアートを美しいと感じることに代表される美意識の重要性を分かりやすく説いています。

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

勝ち過ぎた監督

勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇

★★★

このブログで取り上げるのは初めてですが、高校野球を主題とした本です。高校野球後進国だった北海道で駒沢苫小牧を率いて、甲子園初勝利を上げてから夏の甲子園14連勝を成し遂げる離れ業を成し遂げた幸田監督が主人公です。

多くの高校野球ファンにとって、彗星のごとく現れて北海道勢初となる夏の甲子園の優勝を成し遂げ、その次の年には今やNYヤンキースの主力である田中将大投手を中心に2連覇、さらには3連覇がかかった夏の甲子園決勝で引き分け再試合となり、ハンカチ王子が居た早稲田実業に負けるという劇的なドラマは今でも心に強く残っていることでしょう。

ただ、このドラマを主導した幸田監督がなぜこの栄光の直後に退任したのか、栄光の陰にあったストーリーはほとんど知られていません。本書では、冬場の半年近く屋外での練習が困難であるというハンディを背負いながらも、駒苫をいかにして全国トップクラスの競合に育て上げたところから、栄光と直後に襲った不祥事、さらには電撃的な解任まで幸田監督の波乱万丈な歩みが詳細にまとめられています。

題材こそ高校野球ですが、ビジネスにおいても大いに参考になる栄光とその負の側面に彩られた波乱のストーリーです。常識破りの異才でなければ栄光は成し遂げられない反面、それを維持することも異才には困難であるというストーリーは、カリスマ創業者とその後の失墜を彷彿とさせます。本書を読んで思うのは、一度は創業した会社を追放されながらも不死鳥のごとくよみがえったスティーブ・ジョブズのように、幸田監督にもいつか高校野球の世界で命を燃やすような戦いにもう一度戻ってきてもらいたいということです。

高校野球に特に思い入れのない人にとっても、ビジネス全般に関心がある人には興味深い内容に仕上がっています。

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

巨大アートビジネスの裏側

巨大アートビジネスの裏側 誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか (文春新書)

★★★

最近、お客さんからアートについて質問を受けることが増え、さらに海外のファミリーオフィスではアートの取り扱いは大きなビジネスの1つとなっているということで、まずはアートを取り巻く現状とビジネスのメカニズムについて知りたいと本書を手に取りました。

結論としては、期待通りにアートビジネスの大枠についてよく理解できました。著者は大手オークション会社であるサザビーズの日本法人の社長で、現在は独立してアートを取り扱うエージェントとして活躍しています。

長年にわたってアートに関わり、外部から見えづらい世界の奥の奥まで知っている著者だけあって、豊富なエピソードとともに現代のアートビジネスのダイナミックな側面を分かりやすく教えてくれます。個人的には、なぜここ10年で現代アートの価格が高騰したのか、50年前の印象派の興隆と対応させる形で理解できたことが最も大きな収穫でした。

欧米ではアートは完全にグローバルかつ巨大なビジネスとなっています。購入者として著名な人物たちも著名企業オーナーやファンドマネージャー、さらにはセレブリティなど社交界の大物たちが顔を揃えています。

ゾゾタウンの創業者である前澤さんが、バスキアの作品を62億円で購入したことで欧米のセレブリティの仲間入りをして、レオナルド・ディカプリオにコレクションを見せてもらうために彼の自宅を訪れたというエピソードをメディアに目をしましたが、本書をきっかけに欧米社会でのステップアップに必須のアートについての知見を深めたいと思います。

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

ウォール街のイカロス

ウォール街のイカロス─小説ヘッジファンド

レベル3 ★★★

金融業界で長く活躍しながら、このブログでも紹介した名著「ヘッジホッグ」など金融ノンフィクションを残したバートン・ビッグスによる唯一の小説です。

モルガン・スタンレーに30年以上在籍し、さらにその後もヘッジファンドを立ち上げた著者だけあって、その作品はどれも金融業界に深い洞察を元に、特にマーケット関係者には深く心に突き刺さります。

黒人と白人のハーフというウォール街のマイノリティを主人公に据えた本作品も、ヘッジファンドを中心とした金融業界についてその面白さ、刺激性、そして残酷さということが良く伝わる、迫力ある内容となっています。

ただ、小説としての出来はあまり良いとはいえません。ITバブル前夜からリーマンショック後までが本書の舞台となりますが、時系列が前後することが多く、また登場人物の心情も伝わってこないこと場面も見られ、ストーリーがうまく流れていません。

結末もイカロスというタイトルから想像できるようにハッピーエンドではありませんが、もう少し救いがあっても良いと思いました。この著者の本質はやはりノンフィクションにあると感じました。

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

論語と算盤と私

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

★★★

中々、仰々しいタイトルですが、30そこそこという異例の若さで斜陽だったミクシィの社長に就任し、短期間での立て直しに成功して、現在はスタンフォード大学のMBAの講師として活躍している朝倉さんが書いた、テンポの良い企業論です。

本書の中でも朝倉さんの異例の経歴については紹介されていますが、中学卒業後プロのジョッキーを目指してオーストラリアに渡るが身長が伸びすぎたために断念し、その後猛勉強により東大法学部に進学し、学生中に起業した後にマッキンゼーに入社して、再びスタートアップに戻った後にミクシィの社長になるという激動の内容です。

私にとっては、朝倉さんはマッキンゼー時代の後輩にあたり面識がありますが、上記の波乱のキャリアの苦労を感じさせない飄々とした好青年です。本書も、彼の人柄に沿う形で、様々な立場から企業を見てきた人ならではの多様な視点から、明快にあるべき企業の姿が語られています。

本書に書かれている内容は伝統的な日本の大企業観とは相いれないものあるでしょうが、少なくともグローバルのビジネスシーンでは当たり前とされているものです。ただ、語り口にこれまでの「海外ではXXX」という上から目線のコンサルタント的押しつけがましさが一切なく、日本の上場企業のトップとしても苦労した朝倉さんだけあって、すっと心に入る形で提示されています。

若い人にとってはキャリア論としても貴重な示唆に富むでしょう。様々な分野に若くして該博な知識を持つ朝倉さんならではの骨太な企業論、キャリア論をぜひ特に若い世代の方に読んでほしいと思います。

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

コンテナ物語

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

★★★

原著が出版されたのは2006年で、邦訳が出されたのも2007年とかなり前の本ですが、知人から薦められて最近読んでみましたが、十分今でも参考となる内容でした。経済のグローバル化が進み、さらにeコマースの普及により船で運ばれる貨物量は増加の一途をたどっていますが、それを可能にした存在としてコンテナに焦点をあてています。

本書にもコンテナを主題とした初めての書籍であるという表現がでてきますが、当たり前の存在過ぎてさらにローテクであるために、普段全く注目されないコンテナという存在が、実はグローバル経済に大きく貢献した革新的な発明であったことがよく分かります。

コンテナが登場する以前は、多種多様な品物を船で運ぶ際に、港で働く肉体労働者が手作業で荷物を仕分けしていました。港湾労働者は世界中で既得権益の塊で、独自の組合により仕事が配分されていた為に生産性が低く、さらに盗難や賄賂といった犯罪も横行していました。

それがコンテナ登場により格段に効率化されたプロセスが、港湾労働者や海運会社、港湾管理会社、さらには荷物を運びたいクライアントなど様々な視点から描かれています。ともすれば今のAIに代表されるように目新しいテクノロジーばかりに世の中の注目が集まりがちですが、コンテナという極めてローテクで地味なプロダクトの背景にも、これをうまく活用すれば多大な経済的なメリットが得られると努力した傑物たちが居たというエピソードはとても刺激的でした。

コンテナの処理能力で見ると、世界の上位10港は全て日本以外のアジアの都市の港が占めています。私が普段活動している東アジアの経済の繁栄に欠かせないコンテナというプロダクトに対する思い入れが本書を読んで強くなりました。

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

国家とハイエナ

国家とハイエナ

レベル3 ★★★

経済小説の泰斗、黒木亮氏の最新作は国家と投資ファンドの攻防を描いた作品です。この小説の主人公のモチーフは、エリオットマネジメントのポール・シンガー氏ですが、彼は「世界で最も恐ろしい投資家」という異名で知られています。

長くバンカーとして活躍し、現在も世界最高の金融都市ロンドンで暮らしている著者だけあって、ハイエナファンドが新興国の債券を購入して、米国・英国での訴訟活動を駆使しながら、決して裕福でない新興国から巨額のリターンをどのように搾り取るのか、その手法が克明に描かれています。

本書の主人公であるサミュエル・ジェイコブスは、モチーフとなったポール・シンガー氏の実績をなぞるかのように、アフリカ諸国やアルゼンチンなど新興国からその圧倒的な法律についての知識と、グローバル大手ローファームのネットワークを活かして次々と巨額のリターンを得ていきます。

ただ、この小説を興味深くしていることは、強欲なファンドマネージャーだけでなく、その真逆の立場にあるファンドによる貧困国の搾取を禁じるために活動しているNPOや、ファンドの一社員など様々な立場から、この華麗な搾取劇を描いていることです。多様な立場の登場人物により、巨額のマネーが飛び交うグローバル金融市場の過酷さと、ある種のむなしさがうまく描かれています。

ロンドンやニューヨークといった金融都市を抱えている英国・米国の強みは、世界中の資金を自国に集めていることで裁判に勝ちさえすれば、すぐに自国にある訴訟先の金融資産を抑えて、リターンを確定できることです。

日本の投資ファンドには逆立ちしてもできない芸当であるだけに、本書を読むとアングロサクソンとユダヤ人が作り上げたグローバル金融のプラットフォームと、そのうえで勝ち続ける巨大ファンドの凄さがよく分かるでしょう。

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

世界をつくった6つの革命の物語

世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史

★★★

タイトルを見ると最新の科学技術の話と思うかもしれませんが、本書は人類の歴史を通じて重要な発明を6つ選びだして、発明されるまでの経緯とその発明が社会にどのようなインパクトがあったのか、超長期の歴史に渡って解説されたスケールの大きい書籍です。

その6つの発明とは、「ガラス」、「冷たさ」、「音」、「清潔」、「時間」、「光」です。ガラス以外は全て、トピックに関連する複数のテクノロジーについて解説されています。例えば冷たさであれば、最初は氷を何とか保存して暖かい地域に持っていくことで冷却を実現していましたが、冷蔵庫やエアコンなど人工的な冷たさの発明とともに、どのように新しいテクノロジーに移行し社会にどのような影響を与えたのか、1つのトピックを軸に長い歴史がコンパクトにまとまっているので、テクノロジーの持つインパクトの大きさがよく分かります。

本書を読んで印象的なのは、新たなテクノロジーが誰か1人の大天才によって突発的に見つけられるということはほとんどなく、多くの人による試行錯誤の歴史で徐々に進化していくということが分かります。印象的なのはエジソンによる電球の発見の記述で、彼が現代の起業家にも通じるセルフプロデュースに優れていたため、後世の人は電球をエジソンの功績と認知していますが、それは間違いではないものの、他にも多くの人が発明に貢献していたことが分かります。

ともすれば、テクノロジーの発展というと人工知能など目新しいIT関連のトピックばかりに目が行きがちですが、人類はその長い歴史の中で様々なテクノロジーを多大な苦難の上に創り出し、それによって周囲の人はもちろん、発明者も思いもしなかった形で社会への影響を与えてきたことが、本書を読むと分かります。テクノロジーが持つより本質的な価値に思いを馳せるようにしてくれる、テクノロジーへの愛が詰まった骨太の良書です。

 

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

アルゴリズムが世界を支配する

アルゴリズムが世界を支配する (角川EPUB選書)

レベル3 ★★★

タイトルを見ると近年の人工知能ブームにあやかった本のように見えますが、本書の出版は4年前で時代を先取りしていたことが分かります。本書が興味深いのは、アルゴリズムがどのように世界を変えているのかテクノロジーの観点から分析しているだけでなく、その担い手であるエンジニアの動向にも焦点をあてていることです。

本書の前半はアルゴリズムによる自動化がいち早く取り入れられた金融業界にフォーカスしています。金融業界では40年以上前からコンピュータによる取引の自動化が行われていて、そこからテクノロジーの発展とともにどのようにアルゴリズムの活用が拡大してきたのか、金融業界の記述だけでも普通の本1冊に匹敵するほど詳細に紹介がされています。

しかし、リーマンショックによって、コンピュータサイエンスのエンジニアがウォール街を敬遠するようになって、グーグルやフェイスブックに代表されるシリコンバレーのテック企業を目指すようになり、これらの業界でどのようにアルゴリズムが活用され高度な分析が行われているかに話が進みます。

本書が出版されて4年が経過したことで、音声や画像の認識、さらには自然言語処理など高度なアルゴリズムはますます生活の中に浸透してきています。本書の内容と現状との差分を把握することで、今後のアルゴリズムの発展の方向性について、色々な手掛かりを与えてくれます。

 

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

ビッグデータの残酷な現実

ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす ビッグデータの残酷な現実―――ネットの密かな行動から、私たちの何がわかってしまったのか?

★★★

日本でも浸透しきった感のあるビッグデータというフレーズですが、本書はハーバード大学の数学科を卒業して米国で大手出会い系サイトを創業した人物という、まさにビッグデータの専門家による作品です。データ分析により社会の様々な側面がどこまで定量的に把握できるようになったのかについて、具体例を多く交えながら解説されています。

出会い系サイトの創業者で、数千万人の会員の個人情報に基づいて、太古の昔から人間が関心を持っていた「ルックスがどれほど恋愛的な魅力につながるか」、「人種により異性への印象はどれほど変わるか」、「同性愛者など性的マイノリティはどれほど存在するか」など、恋愛にまつわる様々なトピックについて、結果がすばりまとめられています。

著者はデータ分析の専門家なので、後半では恋愛に関するトピックだけでなく、政治的な意見や知能レベル、反社会的な行動をとるリスクなど人間の振る舞いの様々な側面について、ビッグデータ時代ではデータ分析だけで、かなり事実に肉薄できることについても解説されています。

SNSがあまねく世界に浸透し、オンラインでのコミュニケーションがますます活発化する中、積極的に情報発信をしていなくても、ただWebやSNSを閲覧しているだけで、個人の様々な特性が高確度で推測できることは十分に認識していたつもりですが、本書の分析の多くはその認識を上回り怖さも覚えます。

情報のシェアが進む中で、もちろん良い面だけでなく悪い面もありながらも、こうしたトレンドを追い風に自分のプレゼンスをどんどん上げて行ける人とそうでない人との格差も、どんどん進んでいくだろうなという感想も持ちました。

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

ビッグデータと人工知能

ビッグデータと人工知能 - 可能性と罠を見極める (中公新書)

★★★

またまた人工知能の本を取り上げますが、ここまで紹介してきた一連の人工知能本と本書は趣が異なります。それは、ここまでの本が人工知能の進化の凄さと将来の可能性にフォーカスしているのに対して、本書は安易な人工知能に対する期待を戒める内容となっているからです。

本書の著者の西垣氏は、私の大学院時代の恩師です。私が通った大学院である東京大学の学際情報学府は文字通り、文理の垣根を超えて学際的に情報に関する学ぶという野心的な目標を掲げて新設された大学院でした。西垣氏はこの大学院において目玉の研究者で、実際に彼の授業は分野を縦横に、最新の情報学に関するトピックが繰り広げられてとても刺激的な内容だったことを記憶しています。

本書を読んで、西垣氏の舌鋒鋭い評論が全く衰えていないことを知ってとてもうれしく感じました。西垣氏は現在3回目のブームを迎えている人工知能について、約30年前の前回のブームの際に世界の先端を行っていたスタンフォード大学で研究していました。前回の人工知能ブームはエキスパートシステムに代表される知識群をコンピュータに付与することで、人工知能に専門家を代替させることを目指しましたが大失敗に終わりました。

そして、西垣氏は現在の3回目のブームでもてはやされているディープラーニングやシンギュラリティに同じ危うさを感じています。人工知能ブームに乗って斬新さや奇抜さにフォーカスを当てた情報発信ばかりが注目をされるので、上記の用語とともに人工知能の発展の本質が誤って理解されている現状を著者は強く憂いています。

もちろん、人工知能の発展とその可能性を否定するのではなく、ビッグデータと昨今の人工知能のテクノロジーの進化でどのような成果が期待され、社会の構成員としてどのようにその成果を受け止め、正しく使っていくのかについての心構えが丁寧に解説されています。安易な人工知能本に辟易している人は、本書でフラットな視点を手に入れてから自分の思考をまとめていくことがオススメです。

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

人間さまお断り

人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き

★★★

最近、この書評でも人工知能に関わる本を頻繁に取り上げていますが、本書も邦題にあるように人工知能の進化によって人間の労働のかなりの部分が必要なくなるという内容です。原題は”Human needs not apply”で、人工知能のみを対象とした労働募集という、より著者の意図が伝わりやすい表現になっています。

こう紹介すると、人工知能ブームに乗っかって過剰に危機をあおろうとしていると感じるかもしれませんが、スタンフォード大学の研究所で人工知能について研究し、シリコンバレーでいくつものベンチャーを成功させたシリアルアントレプレナーという顔も持つ著者による地に足がついた分析が展開されています。

著者が人工知能による社会へのインパクトとして最も懸念しているのは経済的な格差拡大です。社会学の研究者ではなく、アマゾンのジェフ・ベゾスやDEショーのデービッド・ショウといった人工知能時代の覇者も知り合いに居る起業家が、格差拡大に関心をもっているということからも、人工知能により更なる格差拡大が引き起こされる可能性が高いことが伝わってきます。

人口知能の進化に伴って人間がやるべき労働内容と、それに必要となるスキルが急速に変化しているにも拘わらず、教育機関がそれに対応していないため、教育ローンを抱える低所得者や失業者が絶望的な環境に置かれている著者の指摘は心に突き刺さります。

単なる警鐘だけでなく、上記の問題に対しては就業機会と対応した形式の教育ローンなど、具体的な対策まで提示されているので、人工知能の進化の影響とその対応策について思索したい方にとっては絶好の入門書と言えるでしょう。

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

ホーム > 書評 > ★★★

ページの上部に戻る