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スティーブ・ジョブズ

スティーブ・ジョブズ Iスティーブ・ジョブズ II

★★★★★

スティーブ・ジョブズの公認伝記です。当初、英語版で読破しようと思い3分の1ほど読み進めたのですが、日本とシンガポールを行き来する中で600ページ以上の大著を読破することは難しく感じ、日本語版に切り替えて一気に読みました。

スティーブ・ジョブズ自らが、良いところだけでなく悪いところも書いてほしいという要望を出したようですが、その通りに稀代の起業家にして複雑な内面を持つジョブズに深く切り込んでいます。ジョブズはもちろん、家族や知人、同僚に広く、そして深いインタビューを行ったことで、ジョブズの人生の歩みが鮮明にかつ網羅的に描かれています。

養子として育てられ、大学を中退したにもかかわらず20代で世界的企業を作り上げ億万長者になったのもつかの間、自らがスカウトしてきた経営者にアップルを追い出され、創業した次のコンピュータ企業NeXTはうまくいかず、でもCGアニメ会社ピクサーで大ヒット作を生み出し、さらにNeXTをアップルが買収したことでアップルのCEOとして復活し、iPod・iPhone・iPadなど大ヒット製品を次々と打ち出してアップルを世界最大の時価総額の企業へと上り詰めさせるも、50代で癌に倒れてCEOを辞任して間もなく亡くなる。

どんな、波乱万丈の物語を描く脚本家でも、あり得ないと一笑に付すだろう浮き沈みの激しい人生が、まるで親友の人生を振り返るかのようなリアリティで再現されていることは、著者の恐るべき筆力の賜物でしょう。上記のようなビジネスマンとしての歩みだけでなく、ジョブズが外部に知られることを極端に嫌った家族やガールフレンドといったプライベートのやり取りも、ジョブズの人物像を深く理解する助けとなっています。

途中まで英語で読みましたが、ネイティブでない私にとっても著者の英語の記述は美しく、流麗であることが分かり、このような伝記作家を持つ英語ネイティブの人はうらやましく感じました。本書を読むとスティーブ・ジョブズがいかに狂気と紙一重の天才であったかがよく分かります。日本の官庁が次のジョブズを作り出すという政策を直近打ち出していますが、学校秀才の官僚が考える政策では絶対にこのような突出した人物を生み出すことはできません。多様な評価軸を持った懐の深い社会をじっくりと育てていくしかありません。

いずれにしろ、同時代を生きた人物として万人が絶対に読んだほうがよい、歴史的な名著です。

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ヘッジファンド

ヘッジファンド―投資家たちの野望と興亡〈1〉ヘッジファンド―投資家たちの野望と興亡〈2〉

レベル3 ★★★★★

ここまで、このブログで150冊以上の書評を書いてきましたが、3冊目となる★5つの最高評価です。米国の老舗シンクタンク「外交問題評議会」に所属する著者が3年にわたる綿密な取材で、その名は知られていても中々実態が見えないヘッジファンドの世界を解き明かしています。

ヘッジファンドという仕組みを作ったと言われるアルフレッド・ジョーンズから始まり、ヘッジファンドを主流の世界に押し上げた初期の大立者3人、ジョージ・ソロス、ジュリアン・ロバートソン、マイケル・スタインハート、クオンツの大物ジェームス・シモンズやデービッド・ショー、サブプライムで2兆円を稼いだジョン・ポールソン、若き業界の変革者ケネス・グリフィンなど、ヘッジファンド業界を代表する人物達の物語が章ごとに展開され、ヘッジファンドという産業が誕生からわずか50年ほどで、2兆ドル(約210兆円)の巨大産業にまで拡大してきた経緯が分かりやすく1つのストーリーにまとめられています。

上記の人物の中でジョージ・ソロスについてはこれまでも多くの著作に登場していますが、本書の記述は群を抜いて詳細で、部下のドラッケンミラーと共にポンド危機やアジア通貨危機、ITバブル崩壊でどのような取引を行い、とてつもない成功と共に大失敗もしてきたことがよく分かります。こうした大物たちの取引については大成功ばかりが喧伝されがちですが、本書には失敗談も数多く登場し、個人投資家としてはむしろ失敗から学べることの方が多いでしょう。

また、これまでほとんどメディアで取り上げられてこなかった、ジェームス・シモンズやデービッド・ショーの同じクオンツ投資家でも異なるスタイルなど、私達のような金融の世界に長くいる人間もうならされるマニアックな解説も多々あります。

著者の姿勢は明快で、サブプライム金融危機の時もヘッジファンドは救済されることなく淘汰されたにも拘わらず、巨大投資銀行や保険会社には多額の資金が各国政府から注入されたことからもわかるように、ヘッジファンド業界はモラルハザードがおきづらく、過度に規制する必要はないどころか将来の金融業界におけるプレゼンスはますます高まっていくだろうし、そうあるべきだとしています。

この結論に同意できるかはさておき、米国のノンフィクション業界の凄さを感じさせる素晴らしい著作ですからぜひ読んでみてください。本書の唯一の欠点は邦題で、原題は「More Money Than God (神様よりお金持ち)」という非常にスタイリッシュであるにもかかわらず、邦題に全くひねりがないのには、編集者にもう少し頭を使ってほしいと残念に感じました。

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世紀の空売り

世紀の空売り

レベル3 ★★★★★

「ライアーズ・ポーカー」、「マネー・ボール」と、ノンフィクションの分野で立て続けに世界的ベストセラーを飛ばした著者の最新作。前2作も非常に優れた出来ですが、本書は米国の不動産バブルが世界的な金融バブルとして膨れ上がり、サブプライム危機が発生し、リーマンショックが起き、世界が不況に突入するという一連の流れの内幕を見事に解説した歴史的な名著です。

これを読めば、米国政府やゴールドマン・サックスやドイツ銀行という巨大投資銀行が、骨の髄まで腐敗していて、彼らが得となるバブル状態を意図的に作り出し、個人顧客はもちろん、法人の取引先までだませるものは全てだまして、徹底的に儲けようとしてきたことが良く分かります。

そして、最後はバブルの火の手に米国政府や巨大投資銀行まで飲み込まれていくのですが、この狂った構図を読み切り、サブプライムローンを元にしたCDOや、金融機関の株式を空売りすることで、金融危機の大暴落で巨額のリターンを得た人たちが主人公です。

世の中のほとんどを敵に回して、何年も耐えることで、自分達の考えが正しいと証明した主人公たちの知力、胆力は驚嘆すべきものです。一方、バブルを作りだした政府や巨大投資銀行のトップ達は、税金により救済され、バブルにより得た巨額の報酬も返還していません。

ボルカールールを始め、現在検討されている新しい金融規制により、間違いを犯した者はその責めを受け、正しい者のみ大きな報酬を得る、健全なマーケットメカニズムが少しでも回復することを願います。

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スノーボール

スノーボール (上) ウォーレン・バフェット伝スノーボール (下) ウォーレン・バフェット伝

レベル3 ★★★★★

世界中の全ての投資家が認める人類史上最高の投資家ウォーレン・バフェットの初めての公認伝記。バフェット本人から信頼されている著者が、本人や親族、関係者への全面的なアクセスを許され、5年以上にわたって綿密な取材を行ったことで、バフェットのこれまでの80年の人生がリアルに描かれています。

この本の題名がスノーボール(雪だるま)になっている理由は、バフェットが投資を雪だるま作りと似ていると考えているからです。初めは転がしても転がしてもなかなか雪玉は大きくなりませんが、ある程度の大きさになってくると同じ労力でも飛躍的に大きさを増していくところは、投資と似ています。

勤勉で贅沢を嫌い、成功したのちには社会全体の為に寄付をするという彼の生き方は、アメリカ社会のロールモデルそのものです。バフェットは、1990‐91年のジャンク債バブル崩壊、98年のLTCM破たん、2001‐02年のITバブル崩壊、そして07‐09年のサブプライム危機と、金融危機が発生したときにはいつも大きな役割を果たしてきました。

残念ながら、本書にはサブプライム危機時の活躍は描かれていません。彼の活動を見ているとあと10年くらいは一線で活躍しそうです。10年後にぜひ同じ著者の、バフェットの伝記続編を読みたいです。

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