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10年後のGAFAを探せ

10年後のGAFAを探せ 世界を変える100社

レベル3 ★★

中々、アグレッシブなタイトルが付けられていますが、GAFAが行っているIT関連ビジネスだけでなく、食品から医療、輸送、宇宙開発、エネルギーなど様々なジャンルの次世代プラットフォーム企業候補が100社選定されています。グローバルのユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の創業20年以内の未上場企業)の大半を占める米国・中国中心の選定であるのは仕方ないですが、日本からも数多くの企業が取り上げられています。

企業サイズも、数百億円から数兆円までとバラエティに富んでいます。海外株投資を行っている人が、現在の未上場企業のトレンドが読み取れて、次の成長エリアを俯瞰でき有益でしょう。一方、国内企業を中心にとても次のGAFA候補とは呼べないようなスケールの会社もかなりの数取り上げられています。

こうした中規模企業が、既に数兆円の企業サイズにまで成長していて、10年とかからずにGAFAの次を担う可能性のある海外企業と併記されているので、玉石混淆感が強くあります。ここに出てくるユニコーン企業については最低限事業内容とポテンシャルについて語れるように本書でしておいて、さらに気になる企業を深堀りしていくという使い方がよいと思います。

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amazon「帝国」との共存

amazon「帝国」との共存

レベル3 ★★★

 

日本でも経済記事でGAFAのことを目にしない日はないほどですが、本書はGAFAの中でも最もグローバルに影響力を持つアマゾンのこれまでの軌跡と今後の動向予測についてよくカバーされています。

著者は小売りを専門とするアナリストであることから、アマゾンだけでなくウォルマートやアリババなど競合を含めた小売業界全体の状況についても、動向が良くまとまっており小売業界の全体像がつかめます。先日、ベイエリアを訪れた時も感じたことですが、GAFAを筆頭に生活のあらゆるシーンにメガテック企業が浸透し、アップルやグーグルの新しい本社施設を見てもSF小説に出てくる世界征服をたくらむ悪の組織のような存在感となってきています。

本書はその中でも最強の帝国であるアマゾンが、祖業のeコマースから、実店舗を通じた小売りに金融/医療保険/ロボット開発/配送/広告などあらゆるビジネス・業界に浸透しようとしていることについて網羅的にまとまっていますから、関連業界の人にとってはアマゾンと今後どのように付き合っていくべきかという示唆に富んでいでしょう。

米国でAmazon goやAmazon Booksを訪れてその思いを強くしましたのは、アマゾンは小売業ではなくあらゆる業種をテクノロジーにより革新しようとするテックを本業とする企業ということですが、本書の豊富な事例からもその本質についてよく学べます。

惜しむらくはあり得ない数字の間違いがあまりに多いことです。原著から間違っているのか翻訳過程で生じたのかわかりませんが、ビジネス上の理解を数字の間違いは大きく妨げるので、とても残念に感じました。

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天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す

レベル3 ★★★★

私はキンドルで読みましたが、紙の本であれば上下編合わせて700ページに迫る大作です。タイトルにある天才数学者とはエドワード・ソープのことで、以前に彼のラスベガスでの活躍については読んだことがありましたが、自伝形式の本著では金融取引での彼の取り組みについての詳細が初めて明かされています。

貧しい生い立ちにも拘わらず、自分の数学的能力一本で登りつめていく姿には感心させられます。前半のブラックジャックやルーレットを、クロード・シャノンなど超一流の科学者たちと攻略していくシーンも事細かに描かれています。特にブラックジャックをカウンティングにより攻略する手法は、ソープ自身の著作がベストセラーとなり、その後も映画化もされたように多数の派生グループを生みました。

ただ、やはり本書の白眉は後半の金融取引で巨万のリターンを稼ぐところです。彼の手法は今やヘッジファンド業界で全盛となっているクオンツ取引で、20年近くにわたるファンド運用でS&P500を10%近くアウトパフォームし、四半期単位で一度もマイナスにならないという素晴らしい成績を残しました。

PNPというソープのファンドは、NYにおける政治抗争の影響とソープが関与しない支社の活動により1990年前に終わりを迎えますが、その取引手法のエッセンスはシタデルなどに引き継がれ、これらのファンドは現在に至るまで素晴らしい成績を残しています。

エドワード・ソープは世の中でブラック・ショールズ方程式として知られるオプション価値を決める微分方程式に、ブラック・ショールズより早くたどり着いており、さらに株価の動きについてより柔軟な分布を取り入れていたことで、同様の手法を用いる他のファンドや投信銀行が巨額のロスを出しているタイミングでも、素早く適応し大きなリターンをあげてきました。

ソープとバフェットの交流についてのエピソードも、投資家としてのスタイルは違うものの一流は一流を知るということがよく分かります。クオンツ取引について少しでも関心のある人は、その開祖とも呼べる人が余すことなく明かしてくれているので必読の良書です。

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現代アート経済学

現代アート経済学 (光文社新書)

★★★

 

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ホモデウス

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来

レベル3 ★★★★

前作「サピエンス全史」が全世界で1,000万部に迫る大ベストセラーとなった著者による人類のこれからの姿についての壮大なスケールの考察が展開されています。前作では人類の約250万年の歩みについて、「イメージを共有できるようになった認知革命」と「時間という概念と社会構造の確立につながった農業革命」、「資本主義と相まって信用を創造し持続的な社会の発展という概念を生み出した科学革命」の3つの革命により、人類を今の地位に押し上げたという論考が展開されました。

その結果、人間中心主義が世界で広く受け入れられるようになったのですが、著者はこれからの未来はデータ中心主義にシフトしていくという論考が繰り広げられています。生化学的に分析しても人間の思考は思いのほか単純なアルゴリズムに支配されており、前回の大統領選挙で問題になったように、SNSなどでの行動形態から簡単に解明され、さらにインプットする情報を操作することで誘導されてしまいます。

人間中心主義の根底にある自由意志という概念には大した意味がなく、巨大なデータと優れたアルゴリズムさえあれば個人単位での意思決定よりもはるかに高い精度で効率的な判断ができるというのがデータ中心主義です。過激に聞こえるかもしれませんが、住居や車を個人所有せずにメガテック企業のアルゴリズムに基づいて相手を信用してシェアしたり、サービスを利用したり製品を購入したりする時も、判断材料だけでなく結果まで同じくメガテック企業のアルゴリズムに依存している現状を考えると、あながち荒唐無稽な話ではないと思います。

ビジネスにおける数十年単位での大きなパラダイムシフトを考える上でも、色々と示唆が得られる骨太な思想書です。

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特捜投資家

特捜投資家

レベル3 ★★

これまで社会を揺るがせた事件についてのノンフィクションを執筆してきた著者による初めての経済小説です。題名に込められた意味合いは、権力者に検察の特捜部が切り込めなくなった今、金の力で以前の特捜部のように巨悪に切り込む投資家が求められているというものです。

結論から言うと、少しビジネスに詳しい人であれば登場人物は誰をモチーフにしているか分かりますし、ストーリーもかなりご都合主義的に進んでいくので少々迫力に欠けます。特捜投資家たる本書の主人公が米国で打ちのめされたとされるリーマンショックで2兆円を稼いだ凄腕ヘッジファンドマネージャーは明らかにジョン・ポールソンをモチーフにしているのでしょうが、現実のポールソンは直近負け続けてファンドもピークの5分の1以下にまで縮小していしまっているので、あまり締まりません。

ただ、見るべきは本書にたびたび出てくる日本のベンチャー企業のいい加減さはかなり的を射ていることです。本書にもイーロン・マスクが登場しますが、彼がすごいところはいかなる大言壮語もサイエンスの事実には反していないことです。対して、本書に出てくる日本の革新的なEVベンチャーもそうですが、日本にはサイエンス上あり得ないことを堂々とのたまうペテン起業家があまたいます。

本書に出てくるようなペテンベンチャーが現実世界のどの企業に当てはまるのか考えながら読むとストーリーにより刺激が感じられると思います。

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エンジェル投資家

エンジェル投資家 リスクを大胆に取り巨額のリターンを得る人は何を見抜くのか

レベル3 ★★★★

ウーバーへの2.5万ドル(約280万円)のエンジェル投資が、現時点で約3.6億ドル(約400億円)の価値になるなど、運用実績から世界最高のエンジェル投資家といわれているジェイソン・カラカニスによるエンジェル投資のハウツー本です。

日本でもベンチャー投資の金額が拡大してきて、ベンチャーを専門にした投資ファンドであるベンチャーキャピタルという言葉もかなり定着してきています。一方、こうしたベンチャーキャピタルから資金調達を受けるさらに前の段階の企業に投資を行うのが、本書が解説しているエンジェル投資です。

カラカニスのように個人で数万ドル単位の投資を行うのが一般的ですが、上記にあるウーバーのような大ヒットをあてると巨額のリターンが期待でき、最近ではカラカニスが最強のベンチャーキャピタルであるセコイアと連携しているように、ベンチャーキャピタルと組んで大きな金額を動かすエンジェル投資家も増えてきています。

本書で一貫しているのがエンジェル投資家という役割をカラカニスが心から愛していて、1人でも多くの人に挑戦してもらいたいという思いです。彼自身が貧しい家庭に育ち、名門大学や名門ファンドと無縁だった人生から、最強のエンジェル投資家にまで上り詰めていることから、社会の広い人にベンチャー投資に関心を持ってもらえるように、エンジェル投資家として成功する秘訣を惜しげもなく披露しています。

ベンチャーの企業価値と数のどちらでも、米国より1桁小さい日本ではなかなかエンジェル投資家として独り立ちするのは困難でしょうが、ベンチャーキャピタルのように外部資金を預からず、自分の資金のみで文字通り裸一貫で勝負するエンジェル投資家という生き方に関心がある人は、ぜひ手に取ってみてください。

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アマゾン 世界最先端の戦略がわかる

amazon 世界最先端の戦略がわかる

レベル3 ★★★

ここのところ、この書評でもアマゾンに関する書籍をよく取り上げていますが、本書は元マイクロソフトの日本法人社長である成毛さんが執筆しているだけあって、アマゾンの現状と戦略のすごみ、さらには今後のポテンシャルのすごさについて、マクロ的な経営の視点からよくまとまっています。

CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)がマイナス30日近いという財務的な視点、歴史上でも最速の勢いで成長してキャッシュカウとなっているクラウド事業AWSや、世界で1億人を超えてきているプライム会員などビジネスモデルのすごさ、こうしたサービスを支える物流などロジスティック上の優位性、さらには音声認識ソフト「アレクサ」や顧客の注文予測を実現する高度なAIや無人配送に近づいているロボティクスなど技術上の先進性など、世界最強企業とされるアマゾンの強さを支える要因が多面的に解説されています。

著者の成毛さんいわく、アマゾンのあらゆる業種・地域に際限のない成長していく様子は、もはや創業者であるジェフ・ベゾスにすら把握不可能で、人類の歴史上でもローマ帝国など限られた組織しか比肩できないという手放しのほめ方です。

私自身、現在地球上でもっとも優れていて、かつ成長ポテンシャルの大きい会社としてアマゾンとアルファベットの2社だと考えています。20世紀の石油にあたる経済の最重要資源は、21世紀に入ってからデータとなっています。データを解析するAIの分野においても、これまで世界トップと見られていたアルファベットに追いつかんばかりのペースで、アマゾンはアルファベットを上回って世界最大の研究開発費をかけています。

投資においてもビジネスでのキャリアアップについても最も知っておくべき企業アマゾンについて本書で学んでみてください。

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The Four GAFA

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

レベル3 ★★★★★

これまで300冊近くの書評を書いてきましたが、5冊目となる最高ランクの5つ星の評価です。データとAIという現在の産業の中で最も成長が期待できる分野の先頭を行き、今や株式時価総額という観点でも世界でトップに立つメガテック企業4社、GAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)の影響力について縦横無尽に論考が繰り広げられています。

この4社は単に儲かっているテック企業というわけではなく、人間が生きてくうえで最も大切な機能である脳と心、性のすべてに密接にかかわっていることが現在の繁栄につながっているという指摘は非常に鋭く、今後もこの4社がさらなる隆盛を極めていくという本書の論考には納得させられます。著者はいわゆるシリアルアントレプレナーで、実際にビジネスの場でこの4社と立ち向かい、叩き潰された経験まであることが、この鋭い論考の背景にはあります。

著者が進めるのはこの4社は、現代社会において一昔前の神が担っていたようなポジションにあり、起業する場合もキャリアアップを図る場合も絶対にこの4社とぶつかることのないようにすべきと徹底して説いています。豊富なデータをもとに、この4社が君臨する現代社会は「超優秀な人にとっては最も生きやすく、そうでない人にとっては最も生きづらい社会」であり、「歴史上もっともビリオネアにはなりやすく、ミリオネアにはなりにくい社会」であると、身もふたもない表現で喝破しています。

つまり、この4社に象徴される圧倒的な一部の勝ち組と、その他ほぼ全員の負け組という構造が宿命的に進んでいくということです。私自身、世界を飛び回りながらこのトレンドが不可逆であることをひしひしと感じています。この格差をどう個人として生き抜くのか、さらには社会全体としてどのようなバッファーを設計すべきかを考える上でも、この4社について知らなければ何ら具体的な案は思い浮かばないでしょう。21世紀を生きていくうえで、著者が必須科目であるとするGAFA4社の実像と今後の影響力についてぜひ本書で学んでみてください。

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2022年の次世代自動車産業

2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路 (PHPビジネス新書)

レベル3 ★★★

自動運転を軸とした次世代の自動車の取り組みについて、日米欧中の既存の自動車メーカーと、米中を中心としたテック企業の新規参入の両面からよくまとまっています。通常の書籍であれば、既存の自動車メーカーかテック企業かのどちらかの視点から、他方への優越性について論じられることが多いですが、両者の取り組みがそれぞれの有利・不利両面バランスよくまとめられているので、表題にあるように近未来の自動車産業の趨勢について予測をするうえでよい手がかりとなります。

個人的には自動運転とシェアリングエコノミーは、現在の個人への販売を前提とした自動車ビジネスを根底からひっくり返すターニングポイントとなって、グーグル子会社のウェイモを筆頭とした新規参入プレーヤーが覇権を握る可能性が高いと見ていますが、本書を読んでGMやトヨタなどの既存プレーヤーの危機意識も相当に高いことを認識しました。

自動車産業は日本経済の外貨獲得手段として突出しており、もしここが電機産業と同じく米中のメガテック企業に崩されると壊滅的な影響があります。自分がかかわっている業種を問わず、日本経済全体の趨勢を決める自動車産業の将来について考えたい人にとってはその手掛かりとなる書籍です。

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プラットフォーム革命

プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか

レベル3 ★★★

米国のFAMGA(フェイスブック・アマゾン・マイクロソフト・グーグル・アップル)と中国のアリババ・テンセントに代表されるメガテック企業が世界の株式時価総額の上位を独占する状態が長らく続いています。本書では、これらメガテックを筆頭とした巨大テック企業をプラットフォーマーとして位置付け、そのビジネスにおける盤石のポジションがどのように築かれたのか、様々な企業の実際の歩みを元に解説しています。

本書の論考が傾聴に値するのは、著者が経済やビジネスの評論家ではなく、実際にテック企業を創業してニッチな分野ながらも独占的な地位を築き上げた起業家であることです。上記のプラットフォーマーたちがいかに米国や中国のクローズドなサークルの中で築き上げられてきたのか、そのインナーサークルの中にいる著者だからこそ把握できる情報も多々盛り込まれています。

私の本業での投資アドバイスにおいてもここ数年は上記のメガテック企業を中心としたテックセクターの株式への投資を主軸に据えてきました。株価のパフォーマンスからも、いかにこれらの企業のポジションが高く評価されているのかよく分かっていたつもりですが、本書を読んでプラットフォーマーとはどのような存在で、データが全てのベースにある現代においてその立場がいかに強固となっているか改めて深く理解できました。

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ブラック・エッジ

ブラックエッジ ――資産1兆円の男、スティーブ・コーエン物語 (ウィザードブックシリーズ)

レベル3 ★★★★

年に1-2冊、米国のノンフィクションのレベルはやはり凄いなと思わせる金融分野の良書に出会いますが、本書はまさにそれに値する重厚な内容となっています。米国史上最大の罰金を支払うことで決着した大手ヘッジファンドSACのインサイダー取引疑惑について、このファンドの創業者である米国屈指の大富豪スティーブ・コーエンの生い立ちにまでさかのぼって、詳細かつ時系列で分かりやすくまとめられています。

あまり恵まれない環境で育ったスティーブ・コーエンはハングリー精神と類稀なトレーダーとしての才能を活かして、世界屈指の巨大ヘッジファンドSACを築き上げます。しかし、そのトレーディング手法には謎が多く、ファンド設立以来年率30%という超ハイリターンをどのように稼ぎ出しているのか、常に疑惑とともに語られてきました。

本書を読むとスティーブ・コーエンのトレーダーとしての優秀さは疑う余地がないとともに、明らかにファーム全体にインサイダー取引が蔓延したことも良く分かります。ヘッジファンド業界では、指数に対する超過リターンを産み出す差別化ポイントをエッジと呼びますが、本書のタイトルにあるようにSACでは多くのブラックなエッジがハイリターンに貢献したことは疑いの余地がありません。

ただ、膨大な客観的な事実の積み上げだけでは大物を罪に問えないのが、米国の金融界の現状で、結局スティーブ・コーエンもファンドとしては巨額の罰金を支払いましたが、個人としては罪に問われることはありませんでした。SACは外部資金を全て返済しなければならなかったものの2年のペナルティ期間を経て、今年には再び外部資金を集めて新たなヘッジファンドの運用に乗り出しています。

どのようにスティーブ・コーエンが罪を逃れて、部下しか有罪とならなかったのか詳細な経緯は本書をぜひ読んでほしいですが、ファンドマネージャーとしてだけではなく今や世界的なアートコレクターとして社交界をにぎわせるコーエンの現在の姿と、彼を追いかけたFBIやSECなど政府組織の担当者の多くが今や金融業界で高報酬を得ているという結末を見ると暗澹たる気持ちとなります。

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