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レベル3のアーカイブ

ホモデウス

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来

レベル3 ★★★★

前作「サピエンス全史」が全世界で1,000万部に迫る大ベストセラーとなった著者による人類のこれからの姿についての壮大なスケールの考察が展開されています。前作では人類の約250万年の歩みについて、「イメージを共有できるようになった認知革命」と「時間という概念と社会構造の確立につながった農業革命」、「資本主義と相まって信用を創造し持続的な社会の発展という概念を生み出した科学革命」の3つの革命により、人類を今の地位に押し上げたという論考が展開されました。

その結果、人間中心主義が世界で広く受け入れられるようになったのですが、著者はこれからの未来はデータ中心主義にシフトしていくという論考が繰り広げられています。生化学的に分析しても人間の思考は思いのほか単純なアルゴリズムに支配されており、前回の大統領選挙で問題になったように、SNSなどでの行動形態から簡単に解明され、さらにインプットする情報を操作することで誘導されてしまいます。

人間中心主義の根底にある自由意志という概念には大した意味がなく、巨大なデータと優れたアルゴリズムさえあれば個人単位での意思決定よりもはるかに高い精度で効率的な判断ができるというのがデータ中心主義です。過激に聞こえるかもしれませんが、住居や車を個人所有せずにメガテック企業のアルゴリズムに基づいて相手を信用してシェアしたり、サービスを利用したり製品を購入したりする時も、判断材料だけでなく結果まで同じくメガテック企業のアルゴリズムに依存している現状を考えると、あながち荒唐無稽な話ではないと思います。

ビジネスにおける数十年単位での大きなパラダイムシフトを考える上でも、色々と示唆が得られる骨太な思想書です。

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特捜投資家

特捜投資家

レベル3 ★★

これまで社会を揺るがせた事件についてのノンフィクションを執筆してきた著者による初めての経済小説です。題名に込められた意味合いは、権力者に検察の特捜部が切り込めなくなった今、金の力で以前の特捜部のように巨悪に切り込む投資家が求められているというものです。

結論から言うと、少しビジネスに詳しい人であれば登場人物は誰をモチーフにしているか分かりますし、ストーリーもかなりご都合主義的に進んでいくので少々迫力に欠けます。特捜投資家たる本書の主人公が米国で打ちのめされたとされるリーマンショックで2兆円を稼いだ凄腕ヘッジファンドマネージャーは明らかにジョン・ポールソンをモチーフにしているのでしょうが、現実のポールソンは直近負け続けてファンドもピークの5分の1以下にまで縮小していしまっているので、あまり締まりません。

ただ、見るべきは本書にたびたび出てくる日本のベンチャー企業のいい加減さはかなり的を射ていることです。本書にもイーロン・マスクが登場しますが、彼がすごいところはいかなる大言壮語もサイエンスの事実には反していないことです。対して、本書に出てくる日本の革新的なEVベンチャーもそうですが、日本にはサイエンス上あり得ないことを堂々とのたまうペテン起業家があまたいます。

本書に出てくるようなペテンベンチャーが現実世界のどの企業に当てはまるのか考えながら読むとストーリーにより刺激が感じられると思います。

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エンジェル投資家

エンジェル投資家 リスクを大胆に取り巨額のリターンを得る人は何を見抜くのか

レベル3 ★★★★

ウーバーへの2.5万ドル(約280万円)のエンジェル投資が、現時点で約3.6億ドル(約400億円)の価値になるなど、運用実績から世界最高のエンジェル投資家といわれているジェイソン・カラカニスによるエンジェル投資のハウツー本です。

日本でもベンチャー投資の金額が拡大してきて、ベンチャーを専門にした投資ファンドであるベンチャーキャピタルという言葉もかなり定着してきています。一方、こうしたベンチャーキャピタルから資金調達を受けるさらに前の段階の企業に投資を行うのが、本書が解説しているエンジェル投資です。

カラカニスのように個人で数万ドル単位の投資を行うのが一般的ですが、上記にあるウーバーのような大ヒットをあてると巨額のリターンが期待でき、最近ではカラカニスが最強のベンチャーキャピタルであるセコイアと連携しているように、ベンチャーキャピタルと組んで大きな金額を動かすエンジェル投資家も増えてきています。

本書で一貫しているのがエンジェル投資家という役割をカラカニスが心から愛していて、1人でも多くの人に挑戦してもらいたいという思いです。彼自身が貧しい家庭に育ち、名門大学や名門ファンドと無縁だった人生から、最強のエンジェル投資家にまで上り詰めていることから、社会の広い人にベンチャー投資に関心を持ってもらえるように、エンジェル投資家として成功する秘訣を惜しげもなく披露しています。

ベンチャーの企業価値と数のどちらでも、米国より1桁小さい日本ではなかなかエンジェル投資家として独り立ちするのは困難でしょうが、ベンチャーキャピタルのように外部資金を預からず、自分の資金のみで文字通り裸一貫で勝負するエンジェル投資家という生き方に関心がある人は、ぜひ手に取ってみてください。

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アマゾン 世界最先端の戦略がわかる

amazon 世界最先端の戦略がわかる

レベル3 ★★★

ここのところ、この書評でもアマゾンに関する書籍をよく取り上げていますが、本書は元マイクロソフトの日本法人社長である成毛さんが執筆しているだけあって、アマゾンの現状と戦略のすごみ、さらには今後のポテンシャルのすごさについて、マクロ的な経営の視点からよくまとまっています。

CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)がマイナス30日近いという財務的な視点、歴史上でも最速の勢いで成長してキャッシュカウとなっているクラウド事業AWSや、世界で1億人を超えてきているプライム会員などビジネスモデルのすごさ、こうしたサービスを支える物流などロジスティック上の優位性、さらには音声認識ソフト「アレクサ」や顧客の注文予測を実現する高度なAIや無人配送に近づいているロボティクスなど技術上の先進性など、世界最強企業とされるアマゾンの強さを支える要因が多面的に解説されています。

著者の成毛さんいわく、アマゾンのあらゆる業種・地域に際限のない成長していく様子は、もはや創業者であるジェフ・ベゾスにすら把握不可能で、人類の歴史上でもローマ帝国など限られた組織しか比肩できないという手放しのほめ方です。

私自身、現在地球上でもっとも優れていて、かつ成長ポテンシャルの大きい会社としてアマゾンとアルファベットの2社だと考えています。20世紀の石油にあたる経済の最重要資源は、21世紀に入ってからデータとなっています。データを解析するAIの分野においても、これまで世界トップと見られていたアルファベットに追いつかんばかりのペースで、アマゾンはアルファベットを上回って世界最大の研究開発費をかけています。

投資においてもビジネスでのキャリアアップについても最も知っておくべき企業アマゾンについて本書で学んでみてください。

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The Four GAFA

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

レベル3 ★★★★★

これまで300冊近くの書評を書いてきましたが、5冊目となる最高ランクの5つ星の評価です。データとAIという現在の産業の中で最も成長が期待できる分野の先頭を行き、今や株式時価総額という観点でも世界でトップに立つメガテック企業4社、GAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)の影響力について縦横無尽に論考が繰り広げられています。

この4社は単に儲かっているテック企業というわけではなく、人間が生きてくうえで最も大切な機能である脳と心、性のすべてに密接にかかわっていることが現在の繁栄につながっているという指摘は非常に鋭く、今後もこの4社がさらなる隆盛を極めていくという本書の論考には納得させられます。著者はいわゆるシリアルアントレプレナーで、実際にビジネスの場でこの4社と立ち向かい、叩き潰された経験まであることが、この鋭い論考の背景にはあります。

著者が進めるのはこの4社は、現代社会において一昔前の神が担っていたようなポジションにあり、起業する場合もキャリアアップを図る場合も絶対にこの4社とぶつかることのないようにすべきと徹底して説いています。豊富なデータをもとに、この4社が君臨する現代社会は「超優秀な人にとっては最も生きやすく、そうでない人にとっては最も生きづらい社会」であり、「歴史上もっともビリオネアにはなりやすく、ミリオネアにはなりにくい社会」であると、身もふたもない表現で喝破しています。

つまり、この4社に象徴される圧倒的な一部の勝ち組と、その他ほぼ全員の負け組という構造が宿命的に進んでいくということです。私自身、世界を飛び回りながらこのトレンドが不可逆であることをひしひしと感じています。この格差をどう個人として生き抜くのか、さらには社会全体としてどのようなバッファーを設計すべきかを考える上でも、この4社について知らなければ何ら具体的な案は思い浮かばないでしょう。21世紀を生きていくうえで、著者が必須科目であるとするGAFA4社の実像と今後の影響力についてぜひ本書で学んでみてください。

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2022年の次世代自動車産業

2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路 (PHPビジネス新書)

レベル3 ★★★

自動運転を軸とした次世代の自動車の取り組みについて、日米欧中の既存の自動車メーカーと、米中を中心としたテック企業の新規参入の両面からよくまとまっています。通常の書籍であれば、既存の自動車メーカーかテック企業かのどちらかの視点から、他方への優越性について論じられることが多いですが、両者の取り組みがそれぞれの有利・不利両面バランスよくまとめられているので、表題にあるように近未来の自動車産業の趨勢について予測をするうえでよい手がかりとなります。

個人的には自動運転とシェアリングエコノミーは、現在の個人への販売を前提とした自動車ビジネスを根底からひっくり返すターニングポイントとなって、グーグル子会社のウェイモを筆頭とした新規参入プレーヤーが覇権を握る可能性が高いと見ていますが、本書を読んでGMやトヨタなどの既存プレーヤーの危機意識も相当に高いことを認識しました。

自動車産業は日本経済の外貨獲得手段として突出しており、もしここが電機産業と同じく米中のメガテック企業に崩されると壊滅的な影響があります。自分がかかわっている業種を問わず、日本経済全体の趨勢を決める自動車産業の将来について考えたい人にとってはその手掛かりとなる書籍です。

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プラットフォーム革命

プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか

レベル3 ★★★

米国のFAMGA(フェイスブック・アマゾン・マイクロソフト・グーグル・アップル)と中国のアリババ・テンセントに代表されるメガテック企業が世界の株式時価総額の上位を独占する状態が長らく続いています。本書では、これらメガテックを筆頭とした巨大テック企業をプラットフォーマーとして位置付け、そのビジネスにおける盤石のポジションがどのように築かれたのか、様々な企業の実際の歩みを元に解説しています。

本書の論考が傾聴に値するのは、著者が経済やビジネスの評論家ではなく、実際にテック企業を創業してニッチな分野ながらも独占的な地位を築き上げた起業家であることです。上記のプラットフォーマーたちがいかに米国や中国のクローズドなサークルの中で築き上げられてきたのか、そのインナーサークルの中にいる著者だからこそ把握できる情報も多々盛り込まれています。

私の本業での投資アドバイスにおいてもここ数年は上記のメガテック企業を中心としたテックセクターの株式への投資を主軸に据えてきました。株価のパフォーマンスからも、いかにこれらの企業のポジションが高く評価されているのかよく分かっていたつもりですが、本書を読んでプラットフォーマーとはどのような存在で、データが全てのベースにある現代においてその立場がいかに強固となっているか改めて深く理解できました。

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ブラック・エッジ

ブラックエッジ ――資産1兆円の男、スティーブ・コーエン物語 (ウィザードブックシリーズ)

レベル3 ★★★★

年に1-2冊、米国のノンフィクションのレベルはやはり凄いなと思わせる金融分野の良書に出会いますが、本書はまさにそれに値する重厚な内容となっています。米国史上最大の罰金を支払うことで決着した大手ヘッジファンドSACのインサイダー取引疑惑について、このファンドの創業者である米国屈指の大富豪スティーブ・コーエンの生い立ちにまでさかのぼって、詳細かつ時系列で分かりやすくまとめられています。

あまり恵まれない環境で育ったスティーブ・コーエンはハングリー精神と類稀なトレーダーとしての才能を活かして、世界屈指の巨大ヘッジファンドSACを築き上げます。しかし、そのトレーディング手法には謎が多く、ファンド設立以来年率30%という超ハイリターンをどのように稼ぎ出しているのか、常に疑惑とともに語られてきました。

本書を読むとスティーブ・コーエンのトレーダーとしての優秀さは疑う余地がないとともに、明らかにファーム全体にインサイダー取引が蔓延したことも良く分かります。ヘッジファンド業界では、指数に対する超過リターンを産み出す差別化ポイントをエッジと呼びますが、本書のタイトルにあるようにSACでは多くのブラックなエッジがハイリターンに貢献したことは疑いの余地がありません。

ただ、膨大な客観的な事実の積み上げだけでは大物を罪に問えないのが、米国の金融界の現状で、結局スティーブ・コーエンもファンドとしては巨額の罰金を支払いましたが、個人としては罪に問われることはありませんでした。SACは外部資金を全て返済しなければならなかったものの2年のペナルティ期間を経て、今年には再び外部資金を集めて新たなヘッジファンドの運用に乗り出しています。

どのようにスティーブ・コーエンが罪を逃れて、部下しか有罪とならなかったのか詳細な経緯は本書をぜひ読んでほしいですが、ファンドマネージャーとしてだけではなく今や世界的なアートコレクターとして社交界をにぎわせるコーエンの現在の姿と、彼を追いかけたFBIやSECなど政府組織の担当者の多くが今や金融業界で高報酬を得ているという結末を見ると暗澹たる気持ちとなります。

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世界のエリート投資家は何を考えているのか、何を見て動くのか

世界のエリート投資家は何を見て動くのか: 自分のお金を確実に守り、増やすために (単行本)

レベル3 ★★★★

著者は米国で有名な自己啓発のセミナー講師で、この情報とタイトルを見ると薄っぺらいマネー啓発本かと錯覚しますが、内容は今の金融界を代表する大物たちに著者自らが長時間にわたって取材した内容に基づいた、骨太な投資入門書に仕上がっています。

流石に著名な自己啓発セミナー講師だけあって、大物たちのお金や投資に関する専門的なアドバイス内容が細かい章立てで、かつ平易な言葉でかみ砕かれて説明されているので、こうした投資本をあまり読んだことがない読者にもとっつきやすいでしょう。

ウォーレン・バフェットやレイ・ダリオといった著名投資家だけでなく、格安のインデックス商品を数多く出しているバンガード社の創業者ジョン・C・ボーグルや大手ネット証券の創業者チャールズ・シュワブなど、個人の投資インフラの整備に貢献したサービサー側にも話をきちんと聞いていて、投資の玄人にとっても学びがあります。

惜しむらくは日本語のタイトルで、原題はMoney Master The Gameとシンプルに投資のプロフェッショナルのエッセンスが詰まった書籍であることが伝わる内容になっているのに対して、だらだらと長い割には読者ターゲットが見えず、個人投資家の多くがスルーしてしまうのではないかと懸念しています。

上記のように投資の初心者から上級者までテンポよく、新たな知識が身に着けられる良書ですから、1人でも多くの読者が手に取ることを願っています。

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生涯投資家

生涯投資家

レベル3 ★★★★

10年ほど前にライブドアのホリエモンと並んで、日本の経済界を大きく揺るがせた村上ファンドの創業者である村上世彰氏の初めての自伝です。私が外資系のコンサルティング会社や金融会社を就職活動で回っているタイミングで村上氏はメディアで大きく取り上げられていて、さらに中学高校の先輩でもあるので、強く印象に残っています。

日本放送を巡るインサイダー取引で有罪判決を受けて村上ファンドが解散してからの10年間はほとんど活動がクローズアップされることはありませんでしたが、村上氏の娘さんが代表を務めるファンドがここ数年いくつかの会社で株主提案をしたことで再び注目を浴びました。

本書を読んで伝わってくることは、村上氏のコーポレートガバナンスに掛ける思いの強さです。そして、村上ファンドの活動が議論のきっかけとなって、日本でも株主に配慮する経営がこの10年でかなり意識されるようになり、ROEなどの定量指標にもそのことは表れてきています。

ただ、米国と比較したときのコーポレートガバナンスの充実度の差は、この10年でも埋まっていないどころか逆に開いているように感じます。村上氏が本書を執筆するきっかけになった娘さんのファンドへの納得感に欠ける強制捜査と、その後の娘さんを襲った悲劇には胸が締め付けられます。10年前の村上ファンドの裁判においても、既得権益を脅かされている日本の財界の感情的な反発の影響を色濃く感じましたし、その時の恐怖感が今でも財界や当局にも残っているからこその、見せしめ的な捜査としか考えられないでしょう。

そうした強い逆風を受けても村上氏とそのお子さんたちの、日本企業のコーポレートガバナンスを米国並みにしたいという情熱には頭が下がります。村上氏と同じくシンガポールをベースにする者としては、合理性に欠け未だに既得権益とそれを支える感情論が根強い日本のマーケットについての問題意識には強く共感できます。ただ、私自身は日本企業が今後ドラスティックに変革することについて国全体の存亡が揺るがされるようなガラポンしかないとほぼ諦めているのですが、あれだけの反発を受けても日本で活動し続けている村上ファミリーには驚嘆するほかありません。

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大統領を操るバンカーたち

大統領を操るバンカーたち(上)──秘められた蜜月の100年大統領を操るバンカーたち(下)──秘められた蜜月の100年

レベル3 ★★★★

日本語のタイトルを見ると怪しげな陰謀論と思う人もいるかもしれませんが、上下巻で800ページにもなる大作で、20世紀初頭からリーマンショックとその後まで100年以上に渡るウォール街と時の政権との関係が詳細にまとめられた大著です。

本書は米国の政治と金融との関係がメインテーマですが、米国の金融史を一気通貫で学ぶ上でも非常に参考となります。米国は20世紀以降、1907年、1929年、1973年、2000年、2007年と5回の金融危機を経験していますが、その時のマーケットの状況がどうだったのか、そして当時の政権がどのように金融界と一体となって危機の収束に尽力したのかがよく分かります。

最初の1907年の金融危機の際には、ウォール街の最高神とも称されたJPモルガンが個人宅に金融界の重鎮を集めることで危機の収束にあたります。1929年の大恐慌は、上記の5回の金融危機の中でも最悪の金融危機であったため、何人もの大統領が問題解決に尽力するも、第二次大戦まで悪影響が尾を引いたことが、時系列でまとめられています。

本書を読むと、20世紀に2度の世界大戦を乗り越え、米国が世界の最強国に登り詰める過程において、いかにウォール街が大きな役割を果たしのかがひしひしと伝わってきます。ただ、時代とともに大統領たち政権メンバーと金融界の関係性は変容してきています。

上記のように20世紀前半の金融危機では大統領と金融界の重鎮との個人的関係が重きをなしていたのに対して、近年は米国の金融業は巨大な権力システムとなり、時の政権はなるべく金融界に自由にさせることのみにフォーカスするようになってきています。

そして、旧権力の打破を訴えてトランプ政権でも、ゴールドマン・サックスやPEファンドを中心とした金融出身のメンバーが経済閣僚の中枢を占め、この状況に拍車が掛かっているように見えます。リーマンショックを中心としたサブプライム危機により、米国を始め世界全体の経済が深く傷ついたにもかかわらず、禊もほとんどなくさらに力を強めている米国の金融業界が今後どのように変容していくのか、100年にわたる歴史を学ぶことで予見できることは多いでしょう。

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巨大アートビジネスの裏側

巨大アートビジネスの裏側 誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか (文春新書)

★★★

最近、お客さんからアートについて質問を受けることが増え、さらに海外のファミリーオフィスではアートの取り扱いは大きなビジネスの1つとなっているということで、まずはアートを取り巻く現状とビジネスのメカニズムについて知りたいと本書を手に取りました。

結論としては、期待通りにアートビジネスの大枠についてよく理解できました。著者は大手オークション会社であるサザビーズの日本法人の社長で、現在は独立してアートを取り扱うエージェントとして活躍しています。

長年にわたってアートに関わり、外部から見えづらい世界の奥の奥まで知っている著者だけあって、豊富なエピソードとともに現代のアートビジネスのダイナミックな側面を分かりやすく教えてくれます。個人的には、なぜここ10年で現代アートの価格が高騰したのか、50年前の印象派の興隆と対応させる形で理解できたことが最も大きな収穫でした。

欧米ではアートは完全にグローバルかつ巨大なビジネスとなっています。購入者として著名な人物たちも著名企業オーナーやファンドマネージャー、さらにはセレブリティなど社交界の大物たちが顔を揃えています。

ゾゾタウンの創業者である前澤さんが、バスキアの作品を62億円で購入したことで欧米のセレブリティの仲間入りをして、レオナルド・ディカプリオにコレクションを見せてもらうために彼の自宅を訪れたというエピソードをメディアに目をしましたが、本書をきっかけに欧米社会でのステップアップに必須のアートについての知見を深めたいと思います。

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