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レベル3のアーカイブ

The Four GAFA

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

レベル3 ★★★★★

これまで300冊近くの書評を書いてきましたが、5冊目となる最高ランクの5つ星の評価です。データとAIという現在の産業の中で最も成長が期待できる分野の先頭を行き、今や株式時価総額という観点でも世界でトップに立つメガテック企業4社、GAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)の影響力について縦横無尽に論考が繰り広げられています。

この4社は単に儲かっているテック企業というわけではなく、人間が生きてくうえで最も大切な機能である脳と心、性のすべてに密接にかかわっていることが現在の繁栄につながっているという指摘は非常に鋭く、今後もこの4社がさらなる隆盛を極めていくという本書の論考には納得させられます。著者はいわゆるシリアルアントレプレナーで、実際にビジネスの場でこの4社と立ち向かい、叩き潰された経験まであることが、この鋭い論考の背景にはあります。

著者が進めるのはこの4社は、現代社会において一昔前の神が担っていたようなポジションにあり、起業する場合もキャリアアップを図る場合も絶対にこの4社とぶつかることのないようにすべきと徹底して説いています。豊富なデータをもとに、この4社が君臨する現代社会は「超優秀な人にとっては最も生きやすく、そうでない人にとっては最も生きづらい社会」であり、「歴史上もっともビリオネアにはなりやすく、ミリオネアにはなりにくい社会」であると、身もふたもない表現で喝破しています。

つまり、この4社に象徴される圧倒的な一部の勝ち組と、その他ほぼ全員の負け組という構造が宿命的に進んでいくということです。私自身、世界を飛び回りながらこのトレンドが不可逆であることをひしひしと感じています。この格差をどう個人として生き抜くのか、さらには社会全体としてどのようなバッファーを設計すべきかを考える上でも、この4社について知らなければ何ら具体的な案は思い浮かばないでしょう。21世紀を生きていくうえで、著者が必須科目であるとするGAFA4社の実像と今後の影響力についてぜひ本書で学んでみてください。

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2022年の次世代自動車産業

2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路 (PHPビジネス新書)

レベル3 ★★★

自動運転を軸とした次世代の自動車の取り組みについて、日米欧中の既存の自動車メーカーと、米中を中心としたテック企業の新規参入の両面からよくまとまっています。通常の書籍であれば、既存の自動車メーカーかテック企業かのどちらかの視点から、他方への優越性について論じられることが多いですが、両者の取り組みがそれぞれの有利・不利両面バランスよくまとめられているので、表題にあるように近未来の自動車産業の趨勢について予測をするうえでよい手がかりとなります。

個人的には自動運転とシェアリングエコノミーは、現在の個人への販売を前提とした自動車ビジネスを根底からひっくり返すターニングポイントとなって、グーグル子会社のウェイモを筆頭とした新規参入プレーヤーが覇権を握る可能性が高いと見ていますが、本書を読んでGMやトヨタなどの既存プレーヤーの危機意識も相当に高いことを認識しました。

自動車産業は日本経済の外貨獲得手段として突出しており、もしここが電機産業と同じく米中のメガテック企業に崩されると壊滅的な影響があります。自分がかかわっている業種を問わず、日本経済全体の趨勢を決める自動車産業の将来について考えたい人にとってはその手掛かりとなる書籍です。

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プラットフォーム革命

プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか

レベル3 ★★★

米国のFAMGA(フェイスブック・アマゾン・マイクロソフト・グーグル・アップル)と中国のアリババ・テンセントに代表されるメガテック企業が世界の株式時価総額の上位を独占する状態が長らく続いています。本書では、これらメガテックを筆頭とした巨大テック企業をプラットフォーマーとして位置付け、そのビジネスにおける盤石のポジションがどのように築かれたのか、様々な企業の実際の歩みを元に解説しています。

本書の論考が傾聴に値するのは、著者が経済やビジネスの評論家ではなく、実際にテック企業を創業してニッチな分野ながらも独占的な地位を築き上げた起業家であることです。上記のプラットフォーマーたちがいかに米国や中国のクローズドなサークルの中で築き上げられてきたのか、そのインナーサークルの中にいる著者だからこそ把握できる情報も多々盛り込まれています。

私の本業での投資アドバイスにおいてもここ数年は上記のメガテック企業を中心としたテックセクターの株式への投資を主軸に据えてきました。株価のパフォーマンスからも、いかにこれらの企業のポジションが高く評価されているのかよく分かっていたつもりですが、本書を読んでプラットフォーマーとはどのような存在で、データが全てのベースにある現代においてその立場がいかに強固となっているか改めて深く理解できました。

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ブラック・エッジ

ブラックエッジ ――資産1兆円の男、スティーブ・コーエン物語 (ウィザードブックシリーズ)

レベル3 ★★★★

年に1-2冊、米国のノンフィクションのレベルはやはり凄いなと思わせる金融分野の良書に出会いますが、本書はまさにそれに値する重厚な内容となっています。米国史上最大の罰金を支払うことで決着した大手ヘッジファンドSACのインサイダー取引疑惑について、このファンドの創業者である米国屈指の大富豪スティーブ・コーエンの生い立ちにまでさかのぼって、詳細かつ時系列で分かりやすくまとめられています。

あまり恵まれない環境で育ったスティーブ・コーエンはハングリー精神と類稀なトレーダーとしての才能を活かして、世界屈指の巨大ヘッジファンドSACを築き上げます。しかし、そのトレーディング手法には謎が多く、ファンド設立以来年率30%という超ハイリターンをどのように稼ぎ出しているのか、常に疑惑とともに語られてきました。

本書を読むとスティーブ・コーエンのトレーダーとしての優秀さは疑う余地がないとともに、明らかにファーム全体にインサイダー取引が蔓延したことも良く分かります。ヘッジファンド業界では、指数に対する超過リターンを産み出す差別化ポイントをエッジと呼びますが、本書のタイトルにあるようにSACでは多くのブラックなエッジがハイリターンに貢献したことは疑いの余地がありません。

ただ、膨大な客観的な事実の積み上げだけでは大物を罪に問えないのが、米国の金融界の現状で、結局スティーブ・コーエンもファンドとしては巨額の罰金を支払いましたが、個人としては罪に問われることはありませんでした。SACは外部資金を全て返済しなければならなかったものの2年のペナルティ期間を経て、今年には再び外部資金を集めて新たなヘッジファンドの運用に乗り出しています。

どのようにスティーブ・コーエンが罪を逃れて、部下しか有罪とならなかったのか詳細な経緯は本書をぜひ読んでほしいですが、ファンドマネージャーとしてだけではなく今や世界的なアートコレクターとして社交界をにぎわせるコーエンの現在の姿と、彼を追いかけたFBIやSECなど政府組織の担当者の多くが今や金融業界で高報酬を得ているという結末を見ると暗澹たる気持ちとなります。

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世界のエリート投資家は何を考えているのか、何を見て動くのか

世界のエリート投資家は何を見て動くのか: 自分のお金を確実に守り、増やすために (単行本)

レベル3 ★★★★

著者は米国で有名な自己啓発のセミナー講師で、この情報とタイトルを見ると薄っぺらいマネー啓発本かと錯覚しますが、内容は今の金融界を代表する大物たちに著者自らが長時間にわたって取材した内容に基づいた、骨太な投資入門書に仕上がっています。

流石に著名な自己啓発セミナー講師だけあって、大物たちのお金や投資に関する専門的なアドバイス内容が細かい章立てで、かつ平易な言葉でかみ砕かれて説明されているので、こうした投資本をあまり読んだことがない読者にもとっつきやすいでしょう。

ウォーレン・バフェットやレイ・ダリオといった著名投資家だけでなく、格安のインデックス商品を数多く出しているバンガード社の創業者ジョン・C・ボーグルや大手ネット証券の創業者チャールズ・シュワブなど、個人の投資インフラの整備に貢献したサービサー側にも話をきちんと聞いていて、投資の玄人にとっても学びがあります。

惜しむらくは日本語のタイトルで、原題はMoney Master The Gameとシンプルに投資のプロフェッショナルのエッセンスが詰まった書籍であることが伝わる内容になっているのに対して、だらだらと長い割には読者ターゲットが見えず、個人投資家の多くがスルーしてしまうのではないかと懸念しています。

上記のように投資の初心者から上級者までテンポよく、新たな知識が身に着けられる良書ですから、1人でも多くの読者が手に取ることを願っています。

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生涯投資家

生涯投資家

レベル3 ★★★★

10年ほど前にライブドアのホリエモンと並んで、日本の経済界を大きく揺るがせた村上ファンドの創業者である村上世彰氏の初めての自伝です。私が外資系のコンサルティング会社や金融会社を就職活動で回っているタイミングで村上氏はメディアで大きく取り上げられていて、さらに中学高校の先輩でもあるので、強く印象に残っています。

日本放送を巡るインサイダー取引で有罪判決を受けて村上ファンドが解散してからの10年間はほとんど活動がクローズアップされることはありませんでしたが、村上氏の娘さんが代表を務めるファンドがここ数年いくつかの会社で株主提案をしたことで再び注目を浴びました。

本書を読んで伝わってくることは、村上氏のコーポレートガバナンスに掛ける思いの強さです。そして、村上ファンドの活動が議論のきっかけとなって、日本でも株主に配慮する経営がこの10年でかなり意識されるようになり、ROEなどの定量指標にもそのことは表れてきています。

ただ、米国と比較したときのコーポレートガバナンスの充実度の差は、この10年でも埋まっていないどころか逆に開いているように感じます。村上氏が本書を執筆するきっかけになった娘さんのファンドへの納得感に欠ける強制捜査と、その後の娘さんを襲った悲劇には胸が締め付けられます。10年前の村上ファンドの裁判においても、既得権益を脅かされている日本の財界の感情的な反発の影響を色濃く感じましたし、その時の恐怖感が今でも財界や当局にも残っているからこその、見せしめ的な捜査としか考えられないでしょう。

そうした強い逆風を受けても村上氏とそのお子さんたちの、日本企業のコーポレートガバナンスを米国並みにしたいという情熱には頭が下がります。村上氏と同じくシンガポールをベースにする者としては、合理性に欠け未だに既得権益とそれを支える感情論が根強い日本のマーケットについての問題意識には強く共感できます。ただ、私自身は日本企業が今後ドラスティックに変革することについて国全体の存亡が揺るがされるようなガラポンしかないとほぼ諦めているのですが、あれだけの反発を受けても日本で活動し続けている村上ファミリーには驚嘆するほかありません。

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大統領を操るバンカーたち

大統領を操るバンカーたち(上)──秘められた蜜月の100年大統領を操るバンカーたち(下)──秘められた蜜月の100年

レベル3 ★★★★

日本語のタイトルを見ると怪しげな陰謀論と思う人もいるかもしれませんが、上下巻で800ページにもなる大作で、20世紀初頭からリーマンショックとその後まで100年以上に渡るウォール街と時の政権との関係が詳細にまとめられた大著です。

本書は米国の政治と金融との関係がメインテーマですが、米国の金融史を一気通貫で学ぶ上でも非常に参考となります。米国は20世紀以降、1907年、1929年、1973年、2000年、2007年と5回の金融危機を経験していますが、その時のマーケットの状況がどうだったのか、そして当時の政権がどのように金融界と一体となって危機の収束に尽力したのかがよく分かります。

最初の1907年の金融危機の際には、ウォール街の最高神とも称されたJPモルガンが個人宅に金融界の重鎮を集めることで危機の収束にあたります。1929年の大恐慌は、上記の5回の金融危機の中でも最悪の金融危機であったため、何人もの大統領が問題解決に尽力するも、第二次大戦まで悪影響が尾を引いたことが、時系列でまとめられています。

本書を読むと、20世紀に2度の世界大戦を乗り越え、米国が世界の最強国に登り詰める過程において、いかにウォール街が大きな役割を果たしのかがひしひしと伝わってきます。ただ、時代とともに大統領たち政権メンバーと金融界の関係性は変容してきています。

上記のように20世紀前半の金融危機では大統領と金融界の重鎮との個人的関係が重きをなしていたのに対して、近年は米国の金融業は巨大な権力システムとなり、時の政権はなるべく金融界に自由にさせることのみにフォーカスするようになってきています。

そして、旧権力の打破を訴えてトランプ政権でも、ゴールドマン・サックスやPEファンドを中心とした金融出身のメンバーが経済閣僚の中枢を占め、この状況に拍車が掛かっているように見えます。リーマンショックを中心としたサブプライム危機により、米国を始め世界全体の経済が深く傷ついたにもかかわらず、禊もほとんどなくさらに力を強めている米国の金融業界が今後どのように変容していくのか、100年にわたる歴史を学ぶことで予見できることは多いでしょう。

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巨大アートビジネスの裏側

巨大アートビジネスの裏側 誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか (文春新書)

★★★

最近、お客さんからアートについて質問を受けることが増え、さらに海外のファミリーオフィスではアートの取り扱いは大きなビジネスの1つとなっているということで、まずはアートを取り巻く現状とビジネスのメカニズムについて知りたいと本書を手に取りました。

結論としては、期待通りにアートビジネスの大枠についてよく理解できました。著者は大手オークション会社であるサザビーズの日本法人の社長で、現在は独立してアートを取り扱うエージェントとして活躍しています。

長年にわたってアートに関わり、外部から見えづらい世界の奥の奥まで知っている著者だけあって、豊富なエピソードとともに現代のアートビジネスのダイナミックな側面を分かりやすく教えてくれます。個人的には、なぜここ10年で現代アートの価格が高騰したのか、50年前の印象派の興隆と対応させる形で理解できたことが最も大きな収穫でした。

欧米ではアートは完全にグローバルかつ巨大なビジネスとなっています。購入者として著名な人物たちも著名企業オーナーやファンドマネージャー、さらにはセレブリティなど社交界の大物たちが顔を揃えています。

ゾゾタウンの創業者である前澤さんが、バスキアの作品を62億円で購入したことで欧米のセレブリティの仲間入りをして、レオナルド・ディカプリオにコレクションを見せてもらうために彼の自宅を訪れたというエピソードをメディアに目をしましたが、本書をきっかけに欧米社会でのステップアップに必須のアートについての知見を深めたいと思います。

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ウォール街のイカロス

ウォール街のイカロス─小説ヘッジファンド

レベル3 ★★★

金融業界で長く活躍しながら、このブログでも紹介した名著「ヘッジホッグ」など金融ノンフィクションを残したバートン・ビッグスによる唯一の小説です。

モルガン・スタンレーに30年以上在籍し、さらにその後もヘッジファンドを立ち上げた著者だけあって、その作品はどれも金融業界に深い洞察を元に、特にマーケット関係者には深く心に突き刺さります。

黒人と白人のハーフというウォール街のマイノリティを主人公に据えた本作品も、ヘッジファンドを中心とした金融業界についてその面白さ、刺激性、そして残酷さということが良く伝わる、迫力ある内容となっています。

ただ、小説としての出来はあまり良いとはいえません。ITバブル前夜からリーマンショック後までが本書の舞台となりますが、時系列が前後することが多く、また登場人物の心情も伝わってこないこと場面も見られ、ストーリーがうまく流れていません。

結末もイカロスというタイトルから想像できるようにハッピーエンドではありませんが、もう少し救いがあっても良いと思いました。この著者の本質はやはりノンフィクションにあると感じました。

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国家とハイエナ

国家とハイエナ

レベル3 ★★★

経済小説の泰斗、黒木亮氏の最新作は国家と投資ファンドの攻防を描いた作品です。この小説の主人公のモチーフは、エリオットマネジメントのポール・シンガー氏ですが、彼は「世界で最も恐ろしい投資家」という異名で知られています。

長くバンカーとして活躍し、現在も世界最高の金融都市ロンドンで暮らしている著者だけあって、ハイエナファンドが新興国の債券を購入して、米国・英国での訴訟活動を駆使しながら、決して裕福でない新興国から巨額のリターンをどのように搾り取るのか、その手法が克明に描かれています。

本書の主人公であるサミュエル・ジェイコブスは、モチーフとなったポール・シンガー氏の実績をなぞるかのように、アフリカ諸国やアルゼンチンなど新興国からその圧倒的な法律についての知識と、グローバル大手ローファームのネットワークを活かして次々と巨額のリターンを得ていきます。

ただ、この小説を興味深くしていることは、強欲なファンドマネージャーだけでなく、その真逆の立場にあるファンドによる貧困国の搾取を禁じるために活動しているNPOや、ファンドの一社員など様々な立場から、この華麗な搾取劇を描いていることです。多様な立場の登場人物により、巨額のマネーが飛び交うグローバル金融市場の過酷さと、ある種のむなしさがうまく描かれています。

ロンドンやニューヨークといった金融都市を抱えている英国・米国の強みは、世界中の資金を自国に集めていることで裁判に勝ちさえすれば、すぐに自国にある訴訟先の金融資産を抑えて、リターンを確定できることです。

日本の投資ファンドには逆立ちしてもできない芸当であるだけに、本書を読むとアングロサクソンとユダヤ人が作り上げたグローバル金融のプラットフォームと、そのうえで勝ち続ける巨大ファンドの凄さがよく分かるでしょう。

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アルゴリズムが世界を支配する

アルゴリズムが世界を支配する (角川EPUB選書)

レベル3 ★★★

タイトルを見ると近年の人工知能ブームにあやかった本のように見えますが、本書の出版は4年前で時代を先取りしていたことが分かります。本書が興味深いのは、アルゴリズムがどのように世界を変えているのかテクノロジーの観点から分析しているだけでなく、その担い手であるエンジニアの動向にも焦点をあてていることです。

本書の前半はアルゴリズムによる自動化がいち早く取り入れられた金融業界にフォーカスしています。金融業界では40年以上前からコンピュータによる取引の自動化が行われていて、そこからテクノロジーの発展とともにどのようにアルゴリズムの活用が拡大してきたのか、金融業界の記述だけでも普通の本1冊に匹敵するほど詳細に紹介がされています。

しかし、リーマンショックによって、コンピュータサイエンスのエンジニアがウォール街を敬遠するようになって、グーグルやフェイスブックに代表されるシリコンバレーのテック企業を目指すようになり、これらの業界でどのようにアルゴリズムが活用され高度な分析が行われているかに話が進みます。

本書が出版されて4年が経過したことで、音声や画像の認識、さらには自然言語処理など高度なアルゴリズムはますます生活の中に浸透してきています。本書の内容と現状との差分を把握することで、今後のアルゴリズムの発展の方向性について、色々な手掛かりを与えてくれます。

 

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人工知能が金融を支配する日

人工知能が金融を支配する日

レベル3 ★★★

人工知能が第3次ブームを迎えて、メディアでもこのワードを見ない日はありませんが、金融業界においてもアルゴリズム取引の増加など人工知能の影響についても関心が高まっています。本書はタイトルだけ見るとキャッチーなタームをちりばめて、人工知能ブームに乗ろうとした本のようにも見えますが、内容はしっかりとしています。

著者は邦銀でトレーディングの一線に長くいた方なので、歴史的に金融業界が現在人工知能と呼ばれている様々なテクノロジーを利用してきたことについて精通していて、歴史的な経緯から最新の情勢まで詳しくまとめられています。

特に、米国のルネッサンス・テクノロジーズやブリッジウォーター・アソシエイツ、シタデルといった米国の巨大ヘッジファンドが、どのように最新の機械学習やディープラーニングに代表される人工知能分野のテクノロジーについて取り組んでいるのかの事例については私も知らないことがあり有用でした。

著者は本書の中で繰り返し、このままでは先行している上記のような米国の巨大ファンドが洗練された人工知能分野の金融テクノロジーを独占してしまい、日本を始めとした他国の金融機関や個人は搾取される一方になる可能性があることを指摘しています。

金融業の歴史が始まってから最も破壊力のあるテクノロジーと言える現在の人工知能に関わる技術が今後どのように金融業界、ひいては社会全体にインパクトを与えるのか、関心がある方は議論のスタートとして必要な知識がコンパクトにまとまった良書です。

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