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投資以外のアーカイブ

Airbnb Story

Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法

★★★★

日本では民泊と呼ばれる一般の住居を旅行者に貸し出すシェアリングサービスの世界最大手Airbnb(エアビーアンドビー)の創業物語です。日本では、ウーバーやエアビーが原則禁止されているために国内で生活しているとシェアリングビジネスのインパクトについては把握できませんが、世界中でもはや新たなインフラと呼べるほどの存在感となっています。

私たちもよほど特別な体験をさせてくれるホテルを除いて、外国を旅行するときはエアビーを使うようになっています。ホテルより圧倒的に安く、かつ住居なので広いスペースを使えることが魅力です。周りにレストランが多い都市部であれば食事をするにも困りませんし、デパートなどで買ってきたり、宅配を頼んだりすることもできてその日の気分で柔軟な旅ができます。

配車アプリの最大手であるウーバーの創業者トラヴィス・カラニックと違って、エアビーの創業者はあまりメディアで取り上げらないので、これまでプロフィールについては何も知りませんでしたが、デザインを学んだ2人とエンジニアというスタートアップの創業者としてはユニークなバックウラウンドのトリオです。

金融危機後の節約志向と、SNSの浸透によるオープンなマインドの若者を中心にエアビーは爆発的に普及して、創業からわずか8年で企業価値は300億ドル(約3.3兆円)を超えるところまで成長してきています。本書では、この超有望企業が上記のようにビジネスとは縁遠いバックグラウンドで、かつビジネス経験もほとんどなかった創業者たちにより、どのように成長してきたのか詳細にまとめられています。

本書を読んで感じるのはシリコンバレーのスタートアップを成長させる生態系の分厚さです。エアビーの創業者たちも倒産寸前のところから、世界で最も名高いスターターであるYコンビネーターのプログラムに参加したことが転機となって成長軌道に乗り、シェアリングサービスという新しい産業において急成長する中で生まれる様々な軋轢に対して、先輩起業家やベンチャー投資家からのアドバイスで切り抜けることが出来ました。

本書を読むと未だシェアリングサービスの利用自体を厳しく規制する日本政府の姿勢に暗澹たる気持ちにさせられます。既得権益との衝突がありながらも、消費者からの支持を背景に柔軟に制度設計をして有望ベンチャーを世界的な企業に成長させている米国のベンチャー産業と当局の凄みにしばらく米国経済の優位は揺るがないと感じさせられます。

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数学的な宇宙

数学的な宇宙 究極の実在の姿を求めて

★★★★

難しそうなタイトルの大著ですが、期待にたがわぬ骨太な大作です。著者は情報理論からのアプローチで宇宙の姿を解き明かす気鋭の物理学者です。現在はMITの教授を務めていますが、最新の宇宙理論について極力専門的な用語や記述を排して、分かりやすく解説してくれています。

これまでも私たちが暮らす宇宙は、多世界のうちの1つである可能性が高いという話は数多くの本で読んできましたが、本書ではそうした物理的な多世界のもっと根底には数学的構造が異なる多世界が広がっているという新たな仮説が展開されています。

ただ、その著者の最新の仮説に行きつくまでに、なぜこの宇宙は多数の宇宙の中の1つに過ぎないと多くの物理学者が考えているのか、量子力学や宇宙論の発展のプロセスを丹念に追いながら解説してあるので、素人にも議論の過程が追いやすくなっています。

普段、マーケットという短期的な事象を相手にしていると、本書のような宇宙論を読むと視野が広がってとても良い知的なリフレッシュとなるのですが、本書の最後で滔々と展開されている数学的構造の多世界理論はこれまで目にした宇宙論の中で最も壮大なフレームワークで、思わず息が深くなりました。

この仮説が裏付けられるような検証が生きている間になされるととても興奮するだろうなと楽しみにしています。

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フェイスブック 不屈の未来戦略

フェイスブック 不屈の未来戦略 (T's BUSINESS DESIGN)

★★★★

フェイスブックの経営について書かれた本はあまたありますが、この本を際立たせているのは著者が経営幹部としてフェイスブックで長く働いた経験を持っていることです。ザッカーバーグやサンドバーグを始めフェイスブックを率いるリーダーたちを近くから見ていただけあって、フェイスブックのここまでの歩みについて迫真の描写が随所に展開されています。

世界の時価総額ランキングは、米国のテック企業が独占しています。その中でも本書で取り上げられているフェイスブックに、アップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾンの5社は、事業規模でも技術的な先進度でも、さらには創業者のカリスマ性でも傑出していて、FAMGAと総称されています。

ただ、フェイスブックがこのように米国を代表するテック企業に登り詰めるまでには多くの紆余曲折がありました。今ではフェイスブックユーザに当たり前となっているニュースフィードも導入当初は強い反発にあいましたし、創業当初には今やほぼ姿を消してしまったマイスペースが先行していました。

上場直後にもモバイルシフトへの懸念が拡大して株価は半値以下にまで下がりましたし、ツイッターやスナップチャットという新興のSNSにとってかわられるという観測も定期的に浮上しました。しかし、ザッカーバーグを始めフェイスブックのリーダーたちはこれらの危機を見事に切り抜け、ワッツアップやインスタグラムという潜在競合も自社に取り込んでさらに成長させ、今や世界のデジタル広告市場をグーグルと2分するまでになっています。

本書ではなぜこのような成長をフェイスブックが成し遂げられたのか、当時の社内の声を多数引用しながら鮮やかに描かれ、まるで社内で自分が同じ成長を共有したかのようによく理解できます。フェイスブックを始め米国のテック企業に関心のある人はもちろん、業種を問わず起業や経営に興味がある人には必読の超オススメ本です。

 

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孫正義 300年王国への野望

孫正義 300年王国への野望

★★★★

3兆円でのアーム社の買収や10兆円ファンドの設立など、ますます活動のスケールが拡大しているソフトバンクの孫社長ですが、これまでにも彼の生い立ちやキャリアについての書籍は数多く出版されてきました。

このブログでもそうした書籍のいくつかを取り上げてきましたが、本書はその中でも傑出した出来栄えです。本書は孫社長のソフトバンク起業当初から現在までのビジネスマンとしてのキャリアを丹念に追っています。これまでの書籍は、孫社長の出自にフォーカスが当たったものが多かったですが、本書ではこれまであまり語られてこなかった創業当初の苦労話が数多く登場します。

今でこそ何兆円ものディールで世界を騒がせている孫社長ですが、創業当初は苦難の連続でその度に恩人が表れて何とか切り抜けていくエピソードの数々には同じ事業を営む者として勇気づけられました。世界に冠たる起業家となった今でもこの頃の恩人への感謝を忘れずに、必ず年1回は御礼をする場を設けているエピソードからも情に厚い孫社長の人柄が伝わってきます。

ニケシュ・アローラ氏への引継ぎやアーム買収の経緯、さらにはトランプ大統領との会談の誰も知らなかった舞台裏など、最新のトピックについても本人や周辺のコメント共に深く切り込まれています。創業期から直近に至るまでの超長期に渡ってこれほど孫社長に肉薄した筆者の取材力には感嘆するしかありません。

世の中から見れば極貧の幼少期から世界的な大富豪にまで上り詰めた超サクセスストーリーですが本人は全く満足していないことが分かります。多くのビジネスマンに前向きなパワーを与えてくれる力作ですから多くの人に手に取ってほしいと感じました。

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ギリシャ人の物語2

ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

★★★★

全15冊からなる「ローマ人の物語」があまりに名高い塩野七生さんのギリシャ人の物語の2作目です。前作が、ペルシャ戦役が中心であったところから、本作では民主主義の巨人ペリクレスを中心として、アテネにおける民主制に焦点があたっています。

ローマ人の物語はもちろん、ルネッサンス期に関する著作など、塩野さんの作品はほぼ全て読破しています。厳密に歴史を追っていくのではなく、まるで眼前に展開されているかの如く、数百年/数千年前のドラマが生き生きとした人物描写により展開されるので、歴史の流れがすっと頭に入ってきます。

同時に、人の世の物語は時代を超えた普遍性があり、読後に様々なことを考えさせられます。まるで、今の世界の流れを予測していたように、本作では民主主義により興隆したアテネが民主主義により没落していく姿が描かれています。誰しもトランプ大統領の米国や、ブレグジット後の英国の行く末と重ね合わせる部分があるでしょう。

ただ、こうした憂鬱な読後感だけでありません。塩野さんはローマ人の物語のカエサルやルネッサンス期のチェーザレ・ボルジアに代表されるように、自身が敬愛する人物の描写が白眉ですが、本書にはアルキビアデスという魅力的な人物が登場し、彼に関する描写はやはり冴えわたっています。

次回作は1年後となるようですが、アレクサンダー大王が登場するようです。麒麟児が大好きな塩野さんが、この人類の歴史上でも最高の部類の麒麟児をどのように描くのか今から楽しみです。

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論語と算盤と私

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

★★★

中々、仰々しいタイトルですが、30そこそこという異例の若さで斜陽だったミクシィの社長に就任し、短期間での立て直しに成功して、現在はスタンフォード大学のMBAの講師として活躍している朝倉さんが書いた、テンポの良い企業論です。

本書の中でも朝倉さんの異例の経歴については紹介されていますが、中学卒業後プロのジョッキーを目指してオーストラリアに渡るが身長が伸びすぎたために断念し、その後猛勉強により東大法学部に進学し、学生中に起業した後にマッキンゼーに入社して、再びスタートアップに戻った後にミクシィの社長になるという激動の内容です。

私にとっては、朝倉さんはマッキンゼー時代の後輩にあたり面識がありますが、上記の波乱のキャリアの苦労を感じさせない飄々とした好青年です。本書も、彼の人柄に沿う形で、様々な立場から企業を見てきた人ならではの多様な視点から、明快にあるべき企業の姿が語られています。

本書に書かれている内容は伝統的な日本の大企業観とは相いれないものあるでしょうが、少なくともグローバルのビジネスシーンでは当たり前とされているものです。ただ、語り口にこれまでの「海外ではXXX」という上から目線のコンサルタント的押しつけがましさが一切なく、日本の上場企業のトップとしても苦労した朝倉さんだけあって、すっと心に入る形で提示されています。

若い人にとってはキャリア論としても貴重な示唆に富むでしょう。様々な分野に若くして該博な知識を持つ朝倉さんならではの骨太な企業論、キャリア論をぜひ特に若い世代の方に読んでほしいと思います。

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カジノとIR

カジノとIR。日本の未来を決めるのはどっちだっ! ?

★★

世の中ではハイパークリエイターという肩書や、沢尻エリカさんの元旦那といったところばかりがクローズアップされている著者の高城氏ですが、パーマネントトラベラーとして世界中を旅して各国の最新事情に詳しく、東京でのカジノ解禁についてのパネルのメンバーであったこともあって、世界中のカジノの実態がコンパクトにまとまっています。

トランプ次期大統領との会談の直後に急ピッチでカジノ法案が可決されたために、その背景にあるメカニズムについて色々なうわさが飛び交っていますが、めまぐるしい展開から議論が十分ではないとカジノに対して批判的な国民が過半を占めているようです。

本書では日本で今後どのようなカジノリゾートを作っていくべきか、最もお手本になると著者が考えているシンガポールのIR(統合型リゾート)を中心に、各国のカジノの展開について網羅的にまとめられています。日本では、そもそもIRがどんなものか知っている人が少なく、これ以上ギャンブル中毒者を増やすことにつながるという、IRの本質とはあまり関係ない議論ばかりが先行しています。

シンガポールで暮らしていて、マリーナベイサンズというIRによりシンガポール経済が活性化している成功例を目の当たりにしているだけに、今後の日本のカジノのあるべき姿について考える上では本書の内容は最低限の議論のベースとして把握しておくべきでしょう。

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スティーブ・ジョブズ

スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで(上)スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで(下)

★★★★

ウォルター・アイザックソン氏による公認伝記が出版されてから5年が経過しましたが、スティーブ・ジョブズ氏と長く付き合いのあったビジネス誌のライターによる新たな伝記です。アイザックソン氏の伝記は世界中で大ベストセラーとなりましたが、その内容については出版直後から賛否両論が巻き起こりました。特に、ジョブズ氏と親交が深かった周囲の人からの評判はあまり芳しくありませんでした。

アイザックソン氏はジョブズ氏からのリクエストで、人生の最後の3年間において密着取材をして公認伝記を書き上げました。ジョブズ氏を良く知る周囲の人にも多くの取材をしたようですが、どうしても昔からの知り合いではないために、「現実歪曲フィールド」に代表されるジョブズ氏のエキセントリックなところを強調した表現が前面に出ていて、そのことが親しい人にとってはジョブズ氏の良い面を消してしまっていると感じたようです。

その点で本書は、ジョブズ氏がアップルを創業して追放される前からインタビューをしたことがあり、ジョブズ氏からの信頼を得て彼の人生の重要な局面を常に取材をしてきた2人による作品であるので、昔はエキセントリックであったジョブズ氏が多くの苦難を乗り越える中でどのように成熟してきたのか、その軌跡が詳細にまとめられています。

アイザックソン氏が描くジョブズ像では、アップル復帰後に多くの才能を束ねてアップルを世界一の企業に押し上げることは不可能だったでしょう。もちろん、ジョブズ氏のリアルな振る舞いを知っている著者による作品だけに、人生の最終局面においてもジョブズ氏が人格上の色々な問題を抱えていたことはきちんと指摘されています。

それでも、相手のことを思いやる優しさをきちんとジョブズ氏が育んできたからこそ、アップル復帰後にあそこまでの成功をおさめられたことが、本書によりよく分かりました。ビジネスマンとしては、公認伝記よりも一人の偉大な起業家の成長の軌跡がよりリアルに分かるこちらの著作の方が、参考になる部分が多かったと感じました。

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人間さまお断り

人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き

★★★

最近、この書評でも人工知能に関わる本を頻繁に取り上げていますが、本書も邦題にあるように人工知能の進化によって人間の労働のかなりの部分が必要なくなるという内容です。原題は”Human needs not apply”で、人工知能のみを対象とした労働募集という、より著者の意図が伝わりやすい表現になっています。

こう紹介すると、人工知能ブームに乗っかって過剰に危機をあおろうとしていると感じるかもしれませんが、スタンフォード大学の研究所で人工知能について研究し、シリコンバレーでいくつものベンチャーを成功させたシリアルアントレプレナーという顔も持つ著者による地に足がついた分析が展開されています。

著者が人工知能による社会へのインパクトとして最も懸念しているのは経済的な格差拡大です。社会学の研究者ではなく、アマゾンのジェフ・ベゾスやDEショーのデービッド・ショウといった人工知能時代の覇者も知り合いに居る起業家が、格差拡大に関心をもっているということからも、人工知能により更なる格差拡大が引き起こされる可能性が高いことが伝わってきます。

人口知能の進化に伴って人間がやるべき労働内容と、それに必要となるスキルが急速に変化しているにも拘わらず、教育機関がそれに対応していないため、教育ローンを抱える低所得者や失業者が絶望的な環境に置かれている著者の指摘は心に突き刺さります。

単なる警鐘だけでなく、上記の問題に対しては就業機会と対応した形式の教育ローンなど、具体的な対策まで提示されているので、人工知能の進化の影響とその対応策について思索したい方にとっては絶好の入門書と言えるでしょう。

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不屈の棋士

不屈の棋士 (講談社現代新書)

★★★

この書評では資産運用やビジネス、テクノロジー、サイエンスがテーマの本を中心に扱ってきて、将棋をメインとした書籍は初めて紹介します。この本をこちらの書評で紹介したのは、棋士たちとファンドマネージャーが置かれている状況が、人間vs人工知能/ソフトウェアという点で極めて似ていると感じたからです。

本書は、近年ソフトが飛躍的に強くなって劣勢に立たされている棋士たちに、ソフトや人工知能についてどのように感じているのかインタビューした内容を中心に構成されています。自分たちの存在価値を脅かしている存在について聞くというのは中々センシティブな事ですから、長く棋士たちに取材している筆者だからこそ聞き出せた内容でしょう。

棋士と言えば羽生善治氏が一般的には圧倒的な知名度を誇り、羽生氏は本業だけでなく、最近では人工知能をテーマとしたNHKスペシャルに出演するなど、日本では知性の象徴の様に見られています。将棋よりはるかに知名度を誇るチェスについても、20年ほど前にIBMの開発したソフトに世界チャンピオンが負けた時はセンセーショナルに報道されましたし、今年はボードゲームの中で最も局面が多いとされる囲碁でも、グーグル傘下のディープマインド社がディープラーニングという最新の人工知能の手法を用いて、これまでの予想よりもはるかに早く世界最強クラスとされる棋士イ・セドル氏を破ったことも世界的な話題となりました。

そして、冒頭で紹介したように、ヘッジファンドの世界でも近年人間のマネージャーが率いるファンドよりも、アルゴリズム取引を主とするファンドの方が総じて成績が良いということが話題となっています。これまで人間の牙城とされてきた知性にまつわる作業においても、ソフトウェアや人工知能が次々と侵食してきています。そうした時に、その道のプロは何を感じどのようにこうしたテクノロジーと向かい合うべきなのか、そして人々や社会はどのような感想を持つのかについて、本書からは色々な示唆が得られます。

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ネルソン・マンデラ 未来を変える言葉

ネルソン・マンデラ 未来を変える言葉

★★

20世紀最後の偉人と呼ばれるネルソン・マンデラの発言の中から、ジャンルごとに明言をまとめた書籍です。マンデラは言わずと知られているでしょうが、南アフリカのアパルトヘイトに対して反抗したことで27年にもわたって投獄されても信念を曲げずに、最後は南アフリカの指導者となり世界から尊敬を集めた人物です。本書には革命の闘士だった時代から晩年に至るまで幅広い時代の発言がまとめられています。

私がマンデラにまつわるエピソードで印象的に覚えているのは、1994年のラグビーW杯の南アフリカ大会で日本代表から150点近くとるなど破竹の勢いで決勝まで来た、当時世界最強とされたNZ代表オールブラックスの面々が決勝の相手である南アフリカの指導者マンデラと握手したときに明らかに気圧された表情をしたというエピソードです。屈強な男たちを肉体からではなく、その偉業により精神的に圧倒したことが、大番狂わせといわれた南アフリカ大会での南アフリカチームの優勝を呼び込んだと複数のコラムニストが指摘していました。

本書にまとめられている言葉は確かに素晴らしい内容です。しかし人は言葉だけでは心を動かされることはありません。マンデラ自身の不屈で気高い行動があってこそ、本書にまとめられている言葉は意味を持ちます。本書を読んで、マンデラの人生の歩みについて深く知りたいと感じました。評価が星2つとなったのは、各ページに2‐3個の言葉のみという内容の少なさによるもので、もちろんマンデラの言葉自体は珠玉のモノばかりです。

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シンギュラリティは近い

シンギュラリティは近い [エッセンス版]―人類が生命を超越するとき

★★★

テクノロジーの進化がAIの発展により加速度的になっていくというシンギュラリティというタームは、日本でもかなり浸透してきています。本書は、そのシンギュラリティという概念を最初に世の中に打ち出した、レイ・カーツワイル氏の書籍です。

元々、カーツワイル氏によって2007年に書かれた600ページ以上の大著から、エッセンス部分を抜き出した要約版となっています。カーツワイル氏は現在、AIで世界最先端を進んでいるグーグルで、機械学習と自然言語処理の研究責任者を務めている著名なエンジニアですから、本書で展開されている2045年にはシンギュラリティが訪れて、22世紀には銀河はおろか宇宙全体に人類が進出するようになるという予想を一笑することはできません。

ただ、一方で2007年に予測された2010年代に達成される技術的内容は、残念ながら2016年現在ほとんど実現しておらず、本書の内容を全て真に受ける訳にはいきません。確かにグーグルを筆頭にAIの開発は急速に進んでいて、10年以上先と考えられていた囲碁で世界トップクラスの棋士を打ち破るなど、着実に世の中にインパクトを残す成果は出てきています。しかし、本書で予測されている2030年までにAIが完全に人間の頭脳を凌駕して、科学研究を加速度的にAIが行っていくことで、人類も脳をそのままデジタルデータとしてサイバースペースにアップロードして永遠の存在となっていくというのはあまりに楽観的過ぎるでしょう。

本書の楽しみ方としては、グーグルの研究開発者はこれくらい楽観的かつ野心的なビジョンの持ち主で、だから米国のトップIT企業は懐が深く、本書の内容のどれくらいの割合が、どれくらいの時間軸でこうした米国のトップIT企業を中心に実現されそうか、読者それぞれが想像しながら読み進めるという姿勢が良いと思います。

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