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投資以外のアーカイブ

宇宙の覇者

宇宙の覇者 ベゾスvsマスク

★★★★★

この書評は起業当初から継続していて、これまで200冊以上について書いてきましたが、6冊目となる★5つの満点評価です。日本語では大仰なタイトルに聞こえますが、英語の原題は”Space Barons”でロックフェラーやカーネギーといった20世紀初頭の米国の財閥の権勢ぶりを示した”Robber Barons”をもじって、大富豪が宇宙開発で激しくしのぎを削っている現状を表しています。

ヴァージングループの創業者であるリチャード・ブランソンやマイクロソフトの共同創業者であるポール・アレンといった大富豪も宇宙開発で一定の役割を果たしていますが、なんといっても主役はスペースXの創業者イーロン・マスクと、アマゾンの創業者にしてロケット開発会社ブルーオリジンも起こしたジェフ・ベゾスです。

何事も派手にぶち上げてスピードを売りにしているスペースXをウサギ、徹底した秘密主義で成果を上げてから控えめに発表するブルー・オリジンを亀と、イソップ童話に例えて両社の創業からの対照的な歩みが詳細にまとめられています。スプートニクやアポロ計画に代表されるように冷戦下での宇宙開発は国威発揚をかけた戦いでしたが、現在ではこの2社を筆頭とする民間企業が主導しています。

冷戦の終結とNASAの予算削減により沈滞していた宇宙開発が、大富豪の情熱と巨額の投資により再び活性化してきていることが分かります。同時に、世間にほとんど知られていないアンドリュー・ビールなど宇宙開発に情熱を傾けた民間人の努力が現在の民間企業の隆盛の礎となっていることも分かります。

人類なら誰しも心を躍らせる宇宙開発を、少年の心を持ち続けた大富豪たちが主導していることは、まさに個の時代を象徴する事例でワクワクさせられます。同時に、民間企業に任せるべきところは任せるというNASAをはじめとした政府組織の決断力と、宇宙開発という超長期にわたりかつダウンサイドもとてつもなく大きい事業に巨額のリスクマネーが集まる現状から、米国の計り知れない底力も感じました。

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Never Lost Again

NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生 (世界を変えた地図)

★★★★

日本語では「2度と迷わない」を意味する洒落た名前がついたこの本は、今や10億人以上が毎月利用するメガサービスとなった、グーグルマップの誕生の軌跡が詳細にまとまったノンフィクションです。

著者は、のちにグーグルに買収され、グーグルマップの1機能として組み入れられているグーグルアースの前身となるサービスを作ったキーホール社の創業メンバーの1人です。キーホール社の創業メンバーの中でダントツの知名度を誇るのがジョン・ハンケで、世界でもトップクラスのシリアルアントレプレナーである彼は、グーグル社を退職して「ポケモンGo」を世に出したナイアンテック社の創業者として世に知られています。著者はこのジョン・ハンケの大学時代からの友人で、このカリスマ的な創業者がどのように世界的な人気を誇るサービスの立ち上げに成功したのか、客観的なトーンでよくまとまっています。

年末年始に帰省した時もうちの子が従兄弟とポケモンGoで盛り上がっていて、その根強い人気は驚くばかりですが、このARゲームにも膨大な地図情報が活用されています。世界中の衛星画像をくまなく集めて、サクサクと世界中のどこでも見られるようにしたグーグルアースはグーグルのテクノロジーレベルの凄みを世界中に印象付けましたが、このサービスは前述したようにグーグルに買収されるまで何度も倒産の危機を迎えたキーホール社により生み出されました。

卓越した技術がありながらもビジネスモデルの確立に苦闘していたスタートアップが、グーグルという巨大なスポンサーとその創業者にしてビジョナリーのラリー・ペイジの巨大な野心と組み合わさったことで、今では世界中の何十億人のスマホユーザーが最も頻繁に使うサービスであるグーグルマップを生みました。まさに理想的なスタートアップストーリーで、起業に関心のある人にはとても心躍る内容です。

ジョン・ハンケの退職後も、グーグルはオンライン情報だけでなく物理世界の情報も全て整理するという目標に向けて貪欲に突き進み、その成果は完全自動運転車やリアルタイムでのAR情報提供サービスとして結実してきています。メガテック企業への反感が強まっている今だからこそ読みたい、テクノロジーの可能性のすばらしさに楽観的にさせてくれる良書です。

 

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現代アート経済学

現代アート経済学 (光文社新書)

★★★

先日、出演した日テレの「WOW」など資産運用の手段としてのアートについて、最近よく質問されるようになってきたので、特にアート市場全体について取り扱った書籍をいくつか読んでいます。

本書は出版が5年程前ですが、現代アートとアジア市場という現在のマーケットを活性化させている2大トレンドについてその萌芽からきちんと目をつけながら、アート市場全体についてわかりやすく解説されていますので、今後のアートシーンの展開を予測する上でも有用でしょう。

古来から特定の国やエリアの経済が勃興したときに、投資対象としてアートに注力することはよく見られてきました。あと数年で米国を抜いて、国別でアートの取扱高がトップになると見られる中国がまさにそうですし、私たちが暮らしているシンガポールもアートステージというイベントを核としてプレゼンスをあげてきています。

日本ではアートへの投資というとバブルの象徴のように思われていますが、当時高値掴みといわれた印象派やピカソの名画は今では倍以上に価格が上がっています。長期にわたって資産を継承する上でマストであるアートマーケットについての入門書としてよく仕上がっています。

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アマゾンのすごいルール

アマゾンのすごいルール

★★★

アマゾンの日本法人の立ち上げにかかわり、その後も10年以上にわたってアマゾンで様々なタスクを手掛けた著者が、現在世界で最も成長ポテンシャルが高いとみなされている企業アマゾンの社内プロセスのどこが優れているのか解説しています。

現在、米国で初となる時価総額1兆ドル(約110兆円)を達成する企業はどこかということが話題になっています。候補としてはアップル・アルファベット(グーグルの親会社)・マイクロソフトがあげられていますが、現在世界最大の時価総額を誇るアップルと並んで最も可能性が高いと見られているのがアマゾンです。

その期待の源泉は、アマゾンの世界で最も優れているとされるキャッシュフローコントロール力で、利益が上がらないように限界ぎりぎりまで投資を行う経営スタイルで知られています。本書ではその潤沢なキャッシュフローを支える投資効率の高さ、意思決定の迅速さなどアマゾンの強みがどのような社内ルールにより生み出されているのか分かりやすく解説されています。

もちろん、全てがアマゾン独自のルールというわけではなく、外資系企業で働いた経験がある人であれば見知っているルールもありますが、ルール設定だけでなく徹底して実行させる点でもアマゾンは優れているのでしょう。その実行力を産み出している創業者ジェフ・ベゾスにも関心がより湧く内容でした。

 

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宇宙ビジネスの衝撃

宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ

★★

今年に入ってから、イーロン・マスク率いるスペースXが立て続けにロケットの再使用に成功し、さらには年内の有人飛行も予定しているなど、日本でも米国の民間企業による宇宙開発の報道は増えてきています。

宇宙ビジネスが注目される最大の理由は登場人物が大物ぞろいであることです。民間企業の有人宇宙飛行については、上記のイーロン・マスクに現在世界一の富豪であるアマゾンの創業者ジェフ・ベゾス、ヴァージン・グループの創業者リチャード・ブランソンといういずれも強烈なキャラクターをした3人のビリオネアがしのぎを削っています。

それ以外にも、グーグルの創業者であるラリー・ペイジや映画監督ジェームズ・キャメロンが小惑星の資源探査企業であるプラネタリー・リソーシーズに巨額の出資をしたり、イーロン・マスクは最終的に2040年には100万人単位の火星移住を目指していたりするなど刺激的なエピソードが満載です。

著者自身がこうしたビジネスに関わっているわけではないので、本書の情報は広く公開されているものが中心ですが、米国を中心とした民間企業がどのように宇宙開発を主導し始めているのか、現状を把握するのには適した内容となっています。

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20アンダ―20

20 under 20 答えがない難問に挑むシリコンバレーの人々

★★★

米国を代表する起業家にしてベンチャー投資家であるピーター・ティール氏が始めた、20歳以下の若者が大学には進学せずに起業の道を選ぶのであれば、10万ドル(約1,100万円)を提供するというプログラムの参加者に焦点をあてたノンフィクションです。

このティール・フェローシップというプログラムは米国で大きな話題を呼びましたが、その後の経過については知らなかったので、本書を手に取りました。結論から言うと、何名か成功者は出ているものの参加者の多くは苦戦していて、一部はフェローシップ参加後に改めて大学に進学しなおしたということです。

ただ、ティール・フェローシップもその在り方を軌道修正していて、今では若者中心を対象にしたベンチャーキャピタルよりさらに創業期の企業にフォーカスをあてたスターターに変貌してきていて、この分野で著名なYコンビネーターや500スタートアップと似た組織となっているようです。本書ではティール・フェローシップだけでなく、こうしたスターターを始めシリコンバレーの若手起業家がどのようなノリで、ビジネスに取り組んでいるのか詳しく紹介されています。

やや対象があちこちに飛んで散漫な印象も持ちますが、シリコンバレーでの起業活動に関心がある人は読んで損がない本です。

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すべての仕事を3分で終わらせる

すべての仕事を3分で終わらせる――外資系リーゼントマネジャーの仕事圧縮術

★★★

著者の岡田さんとはシンガポールで交流があり、彼の初めての著作ということで手に取ってみました。岡田さんは年中暑いシンガポールにもかかわらず、いつも巨大なリーゼントに黒い皮のコートといういでたちで、シンガポールの日本人では知らぬものが居ないほどの存在感をはなっていますが、本書の内容はそれに反して、極めて王道かつ真っ当な仕事術が展開されています。

著者はアクセンチュア・デロイト・マイクロソフトという外資系のエクセレントカンパニーで20年以上活躍してきた実績を持ちますが、こうした外資系のトップ企業と国内企業の生産性の差を、仕事を行う上での意識の違いに求めています。

部下に残業をさせて2度とこういうことを許さないと言われてから、いかに仕事を効率的かつインパクトを残せるように行うのか、著者が仕事を普段行う上で意識しているポイントがクリアにまとまっています。「完璧よりもスピードを重視」、「徹底的に無駄を省く」、「メールには即レス」、「なるべく多くの人をレバレッジする」という著者の仕事術には私もコンサルやファンド時代に意識していた内容と合致するものばかりで、とても納得感がありました。

外資系企業で働いたことがある人であれば、自然と意識することも多いでしょうが、無駄な残業がはびこり先進主要国でも生産性が最低レベルに低迷している日本では、目うろこの点が多いと思います。特に、これから自分の仕事スタイルを築いていく若い世代に学びが多いビジネススキルが満載の本です。

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サピエンス全史

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

★★★★

人類が種として確立してから現代にいたるまでの250万年の歩みを縦横無尽に語った壮大なスケールの作品で、世界中のリーダーから大絶賛されたことでベストセラーとなっています。

移動の連続で中々こうした大著を読み切るタイミングがなかったのですが、日本に年末年始に滞在した時を活かして読み切りました。各界で絶賛されていたことで期待値は相当に高かったのですが、その期待にたがわない示唆に富んだ内容でした。

様々な旧人類の中からホモサピエンスが生き残ったのはイメージを共有する能力であった、人類の数を大幅に増やすことを可能にした農業革命は個々人の生活レベルを実は大幅に引き下げる負の側面もあったなど、驚愕の事実が次々と豊富なデータや事例をもとに語られていて、読んでいてさらに調べたくなる事象が沢山見つかる知的刺激に満ちた作品です。

前半は人類のこれまでの長い歩みについて、後半は現代社会を語る上で欠かせない科学や経済について記述が割かれています。本書の最終章は「神になった動物」ですが、欧米では本書の続編である「ホモデウス」が発売されて、こちらも大きな話題となっています。

ホモサピエンスが種として生き残る原動力となったイメージを共有する力と、AIや遺伝子操作といった最新のテクノロジーが組み合わさった時に、人類はどのような存在となるのかというこちらも途轍もないスケールの作品のようですから、今年9月の日本語版の発売を楽しみに待っています。

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勝ち過ぎた監督

勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇

★★★

このブログで取り上げるのは初めてですが、高校野球を主題とした本です。高校野球後進国だった北海道で駒沢苫小牧を率いて、甲子園初勝利を上げてから夏の甲子園14連勝を成し遂げる離れ業を成し遂げた幸田監督が主人公です。

多くの高校野球ファンにとって、彗星のごとく現れて北海道勢初となる夏の甲子園の優勝を成し遂げ、その次の年には今やNYヤンキースの主力である田中将大投手を中心に2連覇、さらには3連覇がかかった夏の甲子園決勝で引き分け再試合となり、ハンカチ王子が居た早稲田実業に負けるという劇的なドラマは今でも心に強く残っていることでしょう。

ただ、このドラマを主導した幸田監督がなぜこの栄光の直後に退任したのか、栄光の陰にあったストーリーはほとんど知られていません。本書では、冬場の半年近く屋外での練習が困難であるというハンディを背負いながらも、駒苫をいかにして全国トップクラスの競合に育て上げたところから、栄光と直後に襲った不祥事、さらには電撃的な解任まで幸田監督の波乱万丈な歩みが詳細にまとめられています。

題材こそ高校野球ですが、ビジネスにおいても大いに参考になる栄光とその負の側面に彩られた波乱のストーリーです。常識破りの異才でなければ栄光は成し遂げられない反面、それを維持することも異才には困難であるというストーリーは、カリスマ創業者とその後の失墜を彷彿とさせます。本書を読んで思うのは、一度は創業した会社を追放されながらも不死鳥のごとくよみがえったスティーブ・ジョブズのように、幸田監督にもいつか高校野球の世界で命を燃やすような戦いにもう一度戻ってきてもらいたいということです。

高校野球に特に思い入れのない人にとっても、ビジネス全般に関心がある人には興味深い内容に仕上がっています。

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Airbnb Story

Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法

★★★★

日本では民泊と呼ばれる一般の住居を旅行者に貸し出すシェアリングサービスの世界最大手Airbnb(エアビーアンドビー)の創業物語です。日本では、ウーバーやエアビーが原則禁止されているために国内で生活しているとシェアリングビジネスのインパクトについては把握できませんが、世界中でもはや新たなインフラと呼べるほどの存在感となっています。

私たちもよほど特別な体験をさせてくれるホテルを除いて、外国を旅行するときはエアビーを使うようになっています。ホテルより圧倒的に安く、かつ住居なので広いスペースを使えることが魅力です。周りにレストランが多い都市部であれば食事をするにも困りませんし、デパートなどで買ってきたり、宅配を頼んだりすることもできてその日の気分で柔軟な旅ができます。

配車アプリの最大手であるウーバーの創業者トラヴィス・カラニックと違って、エアビーの創業者はあまりメディアで取り上げらないので、これまでプロフィールについては何も知りませんでしたが、デザインを学んだ2人とエンジニアというスタートアップの創業者としてはユニークなバックウラウンドのトリオです。

金融危機後の節約志向と、SNSの浸透によるオープンなマインドの若者を中心にエアビーは爆発的に普及して、創業からわずか8年で企業価値は300億ドル(約3.3兆円)を超えるところまで成長してきています。本書では、この超有望企業が上記のようにビジネスとは縁遠いバックグラウンドで、かつビジネス経験もほとんどなかった創業者たちにより、どのように成長してきたのか詳細にまとめられています。

本書を読んで感じるのはシリコンバレーのスタートアップを成長させる生態系の分厚さです。エアビーの創業者たちも倒産寸前のところから、世界で最も名高いスターターであるYコンビネーターのプログラムに参加したことが転機となって成長軌道に乗り、シェアリングサービスという新しい産業において急成長する中で生まれる様々な軋轢に対して、先輩起業家やベンチャー投資家からのアドバイスで切り抜けることが出来ました。

本書を読むと未だシェアリングサービスの利用自体を厳しく規制する日本政府の姿勢に暗澹たる気持ちにさせられます。既得権益との衝突がありながらも、消費者からの支持を背景に柔軟に制度設計をして有望ベンチャーを世界的な企業に成長させている米国のベンチャー産業と当局の凄みにしばらく米国経済の優位は揺るがないと感じさせられます。

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数学的な宇宙

数学的な宇宙 究極の実在の姿を求めて

★★★★

難しそうなタイトルの大著ですが、期待にたがわぬ骨太な大作です。著者は情報理論からのアプローチで宇宙の姿を解き明かす気鋭の物理学者です。現在はMITの教授を務めていますが、最新の宇宙理論について極力専門的な用語や記述を排して、分かりやすく解説してくれています。

これまでも私たちが暮らす宇宙は、多世界のうちの1つである可能性が高いという話は数多くの本で読んできましたが、本書ではそうした物理的な多世界のもっと根底には数学的構造が異なる多世界が広がっているという新たな仮説が展開されています。

ただ、その著者の最新の仮説に行きつくまでに、なぜこの宇宙は多数の宇宙の中の1つに過ぎないと多くの物理学者が考えているのか、量子力学や宇宙論の発展のプロセスを丹念に追いながら解説してあるので、素人にも議論の過程が追いやすくなっています。

普段、マーケットという短期的な事象を相手にしていると、本書のような宇宙論を読むと視野が広がってとても良い知的なリフレッシュとなるのですが、本書の最後で滔々と展開されている数学的構造の多世界理論はこれまで目にした宇宙論の中で最も壮大なフレームワークで、思わず息が深くなりました。

この仮説が裏付けられるような検証が生きている間になされるととても興奮するだろうなと楽しみにしています。

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フェイスブック 不屈の未来戦略

フェイスブック 不屈の未来戦略 (T's BUSINESS DESIGN)

★★★★

フェイスブックの経営について書かれた本はあまたありますが、この本を際立たせているのは著者が経営幹部としてフェイスブックで長く働いた経験を持っていることです。ザッカーバーグやサンドバーグを始めフェイスブックを率いるリーダーたちを近くから見ていただけあって、フェイスブックのここまでの歩みについて迫真の描写が随所に展開されています。

世界の時価総額ランキングは、米国のテック企業が独占しています。その中でも本書で取り上げられているフェイスブックに、アップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾンの5社は、事業規模でも技術的な先進度でも、さらには創業者のカリスマ性でも傑出していて、FAMGAと総称されています。

ただ、フェイスブックがこのように米国を代表するテック企業に登り詰めるまでには多くの紆余曲折がありました。今ではフェイスブックユーザに当たり前となっているニュースフィードも導入当初は強い反発にあいましたし、創業当初には今やほぼ姿を消してしまったマイスペースが先行していました。

上場直後にもモバイルシフトへの懸念が拡大して株価は半値以下にまで下がりましたし、ツイッターやスナップチャットという新興のSNSにとってかわられるという観測も定期的に浮上しました。しかし、ザッカーバーグを始めフェイスブックのリーダーたちはこれらの危機を見事に切り抜け、ワッツアップやインスタグラムという潜在競合も自社に取り込んでさらに成長させ、今や世界のデジタル広告市場をグーグルと2分するまでになっています。

本書ではなぜこのような成長をフェイスブックが成し遂げられたのか、当時の社内の声を多数引用しながら鮮やかに描かれ、まるで社内で自分が同じ成長を共有したかのようによく理解できます。フェイスブックを始め米国のテック企業に関心のある人はもちろん、業種を問わず起業や経営に興味がある人には必読の超オススメ本です。

 

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