ホーム > アーカイブ > 2019年6月のアーカイブ

2019年6月のアーカイブ

天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す

レベル3 ★★★★

私はキンドルで読みましたが、紙の本であれば上下編合わせて700ページに迫る大作です。タイトルにある天才数学者とはエドワード・ソープのことで、以前に彼のラスベガスでの活躍については読んだことがありましたが、自伝形式の本著では金融取引での彼の取り組みについての詳細が初めて明かされています。

貧しい生い立ちにも拘わらず、自分の数学的能力一本で登りつめていく姿には感心させられます。前半のブラックジャックやルーレットを、クロード・シャノンなど超一流の科学者たちと攻略していくシーンも事細かに描かれています。特にブラックジャックをカウンティングにより攻略する手法は、ソープ自身の著作がベストセラーとなり、その後も映画化もされたように多数の派生グループを生みました。

ただ、やはり本書の白眉は後半の金融取引で巨万のリターンを稼ぐところです。彼の手法は今やヘッジファンド業界で全盛となっているクオンツ取引で、20年近くにわたるファンド運用でS&P500を10%近くアウトパフォームし、四半期単位で一度もマイナスにならないという素晴らしい成績を残しました。

PNPというソープのファンドは、NYにおける政治抗争の影響とソープが関与しない支社の活動により1990年前に終わりを迎えますが、その取引手法のエッセンスはシタデルなどに引き継がれ、これらのファンドは現在に至るまで素晴らしい成績を残しています。

エドワード・ソープは世の中でブラック・ショールズ方程式として知られるオプション価値を決める微分方程式に、ブラック・ショールズより早くたどり着いており、さらに株価の動きについてより柔軟な分布を取り入れていたことで、同様の手法を用いる他のファンドや投信銀行が巨額のロスを出しているタイミングでも、素早く適応し大きなリターンをあげてきました。

ソープとバフェットの交流についてのエピソードも、投資家としてのスタイルは違うものの一流は一流を知るということがよく分かります。クオンツ取引について少しでも関心のある人は、その開祖とも呼べる人が余すことなく明かしてくれているので必読の良書です。

  • コメント(閉): 0
  • トラックバック(閉): 0

ホーム > アーカイブ > 2019年6月のアーカイブ

ページの上部に戻る