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ギリシャ人の物語Ⅲ

ギリシア人の物語III 新しき力

★★★★

ルネッサンスを生き生きと描く著作群で世に知られるようになって、全15冊からなるローマ人の物語で当代随一の歴史エッセイストとしてのポジションを確立した塩野七生さんの最後の長編エッセイです。

塩野さんの作品は十字軍に関する著作を除いてほぼ全て読んできているので、彼女の最後の作品というだけでジンとしながら読み進めましたが、本作ではアレクサンダー大王という人類の歴史でも屈指の傑出した個が登場するので、塩野さんの真骨頂といえる魅力的な個人を軸とした歴史物語が存分に展開されています。

ローマ人の物語の中でも、カエサルの巻が傑出した出来ばえであることは読者の多くの意見が一致するところでしょうが、ギリシャ人の物語の3部作の中でもアレクサンダー大王という存在により本作が最も魅力的という意見がほとんどでしょう。

他の2作でもテミストクレスなど、著者の思い入れが強い人物に関する記述は魅力的でしたが、それ以外は個人名と歴史的な事実の羅列で読みづらい部分も見受けられました。その点では本作の8割方はアレクサンダー大王と、その父フィリッポス二世の記述に割かれていて、まるで映像作品のようにこの親子の鮮やかな会戦シーンが次々と描かれているので、前2作よりはるかにスムーズに読了しました。

それでも、ローマ人の物語と比較すると迫真さに欠けることは否めませんが、80歳という著者の年齢を考えるとここまでの大部を毎年仕上げる気力には脱帽せざるをえません。もう、塩野さんの長編エッセイは読めないので、今年は時間を見つけて彼女の長編作品で唯一読んでいない十字軍物語にチャレンジしたいと考えています。

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