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ピクサー 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話

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これまでこのブログでは200冊以上の書評を書いてきましたが、7冊目となる5点満点評価です。今やタイトルにもあるように世界一のクオリティのアニメを作る会社としての名声をほしいままにしているピクサーですが、本書はスティーブ・ジョブズに請われCFO(最高財務責任者)としてまだ吹けば飛ぶような状態だったピクサーに参画した著者の視点から書かれた、ピクサーのビジネス面における成長の軌跡です。

これまでもこのブログでピクサーの制作サイドに関する著作は何度か紹介してきましたが、本書はタイトルにもあるようにCGアニメの長編作品というこれまで誰も取り組んでこなかった種類の制作という極めてリスクの高いビジネスモデルを採用したピクサーが、幾多の財政的な困難に見舞われ、それでも著者とジョブズを中心としたマネジメントの踏ん張りにより、なんとか今日を迎えられたことが詳細にまとめられています。

印象的なのが著者とジョブズの親密な関係で、アップル追放後に立ち上げたコンピュータ会社ネクストもうまくいかず、ピクサーも赤字を垂れ流し個人資金で支え続けてきたジョブズの苦境が、ピクサーの躍進と共に再び世界的な成功譚へとステップアップしていく様子がよく伝わってきます。ピクサーとかかわったことでディズニーをはじめとしてメディア・エンタメ業界の動向に精通でき、復帰後に音楽配信を皮切りとしてアップルを見事に再生させていった、ジョブズの晩年の経営者としての成熟につながったことも分かります。

ハーバードロースクールから弁護士資格を得て、さらにテックベンチャー企業のCFOと絵にかいたようなエリート街道を歩んできた著者が、まったく門外漢で海のものとも山のものともつかぬピクサーに飛び込み、初めての作品であるトイストーリーの制作とIPO、ディズニーとの契約交渉というメガトン級のディールを何とかこなして、最終的にディズニーに1兆円近い金額でピクサーを完全買収させるまでに導くストーリーは、読者としても各場面でのプレッシャーが痛いほど伝わり、同時に乗り越えた時の大きな成長も実感させてくれる迫力ある描写の連続です。

ピクサー退任後の著者の驚くべき転身ぶりと、しかしそれはピクサーの傑出した組織文化によるものだったというくだりにも感動させられます。起業家はもちろん、どのようなロールのビジネスマンにも示唆のある素晴らしい作品です。

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