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人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか

  • 2017年2月24日 8:00 AM
  • ★★

人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?―――最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質

★★

人工知能が頭脳ゲームで人類最強を倒したというと、グーグルが開発したアルファ碁が昨年に韓国のトッププロを倒した囲碁が世界的な話題となりましたが、本書は将棋ソフトで最強であるポナンザ開発者の山本氏による著書です。

アルファ碁が一昨年末に欧州チャンピオンを倒し、昨年3月に韓国最強で世界トップクラスのイ・セドルを4勝1敗で倒し、さらに今年の頭にはオンライン上の対戦で人類トップクラスに対して60連勝するなど、囲碁についてはまだ10年以上かかるという見方が大勢であったところから、わずか1年半で人類を超えるところまで一気に進化しました。

将棋については囲碁ほど急速ではありませんでしたが、電王戦という形で5年ほど前からプロ棋士と将棋ソフトの対局が始まり、その中でもポナンザは全勝を守るなど、圧倒的な強さを示しています。本書では開発当初はアマチュアにも全く勝てないレベルから、10年以下で人間のトップクラスでもかなわないほどの強さまでに進化した過程を、メディアでもよく使われるようになってきた機械学習やディープラーニングといった人工知能に関する用語の解説も含めて、分かりやすくまとめられています。

著者にとって畑違いである囲碁の世界の人工知能についても、アルファ碁とイ・セドルとの戦いを中心に巻末での対談含めて色々な情報がちりばめられています。AIの最新事例について取り扱った書籍は、技術開発を主導している米国で書かれて、日本語に翻訳されているモノがほとんどです。本書は日本人が初学者向けに分かりやすく解説してくれた貴重な入門書ですから、囲碁や将棋ソフトを見て人工知能に関心を持った人はぜひ手に取ってください。

 

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データ分析の力

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

レベル3 ★★★

ビッグデータという用語が数年前からあらゆるビジネス分野で頻繁に使われるようになっています。カメラやセンサーを多数積んだスマホが世界中に何十億台とばら撒かれたことで、画像データを中心として世の中のデータ量が爆発的に増えました。また、スマホの普及により種々のセンサーが量産効果で安くなり、データを処理するチップも高性能化、低消費電力化が進んだことで、IoTなどこれまでデータが取得していなかった分野でもリアルタイムでデータ収集できるようになりました。

要は世の中のデータ量が飛躍的に増えたことで、ビッグデータがキーワードになっているのですが、本書はその取得したデータを使って正しく分析を行い、意味のある結果を導く手法についての入門書です。世の中のデータ量が増える一方、分析のリテラシーが向上しているとはいいがたく、折角取得したデータを無駄にした事例はメディアでもよく見られます。

本書にもあるようにデータ分析は、おいしい寿司を握るのと同じで、新鮮なネタ(良質のデータ)だけでは不十分で、腕の良い職人が寿司というフォーマットにまで仕上げる(きちんとバイアスを取り除いた分析を行う)必要があります。

データ量という寿司ネタは世界中で様々な素材が手に入るようになった一方、腕の良い寿司職人の数は中々増えず、おいしいお寿司を出すお店は限られているという現状においても、データ分析と寿司の世界は共通しています。

本書は集中すれば数時間で、世の中にあふれている質の低いデータ分析の問題点と、良質なデータ分析を行う手法について理解できるように、コンパクトにまとまっています。タイトルは固いですが、データ分析のリテラシーの向上に資する良書ですから、幅広い層の人に読んでほしいと思います。

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大統領を操るバンカーたち

大統領を操るバンカーたち(上)──秘められた蜜月の100年大統領を操るバンカーたち(下)──秘められた蜜月の100年

レベル3 ★★★★

日本語のタイトルを見ると怪しげな陰謀論と思う人もいるかもしれませんが、上下巻で800ページにもなる大作で、20世紀初頭からリーマンショックとその後まで100年以上に渡るウォール街と時の政権との関係が詳細にまとめられた大著です。

本書は米国の政治と金融との関係がメインテーマですが、米国の金融史を一気通貫で学ぶ上でも非常に参考となります。米国は20世紀以降、1907年、1929年、1973年、2000年、2007年と5回の金融危機を経験していますが、その時のマーケットの状況がどうだったのか、そして当時の政権がどのように金融界と一体となって危機の収束に尽力したのかがよく分かります。

最初の1907年の金融危機の際には、ウォール街の最高神とも称されたJPモルガンが個人宅に金融界の重鎮を集めることで危機の収束にあたります。1929年の大恐慌は、上記の5回の金融危機の中でも最悪の金融危機であったため、何人もの大統領が問題解決に尽力するも、第二次大戦まで悪影響が尾を引いたことが、時系列でまとめられています。

本書を読むと、20世紀に2度の世界大戦を乗り越え、米国が世界の最強国に登り詰める過程において、いかにウォール街が大きな役割を果たしのかがひしひしと伝わってきます。ただ、時代とともに大統領たち政権メンバーと金融界の関係性は変容してきています。

上記のように20世紀前半の金融危機では大統領と金融界の重鎮との個人的関係が重きをなしていたのに対して、近年は米国の金融業は巨大な権力システムとなり、時の政権はなるべく金融界に自由にさせることのみにフォーカスするようになってきています。

そして、旧権力の打破を訴えてトランプ政権でも、ゴールドマン・サックスやPEファンドを中心とした金融出身のメンバーが経済閣僚の中枢を占め、この状況に拍車が掛かっているように見えます。リーマンショックを中心としたサブプライム危機により、米国を始め世界全体の経済が深く傷ついたにもかかわらず、禊もほとんどなくさらに力を強めている米国の金融業界が今後どのように変容していくのか、100年にわたる歴史を学ぶことで予見できることは多いでしょう。

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巨大アートビジネスの裏側

巨大アートビジネスの裏側 誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか (文春新書)

★★★

最近、お客さんからアートについて質問を受けることが増え、さらに海外のファミリーオフィスではアートの取り扱いは大きなビジネスの1つとなっているということで、まずはアートを取り巻く現状とビジネスのメカニズムについて知りたいと本書を手に取りました。

結論としては、期待通りにアートビジネスの大枠についてよく理解できました。著者は大手オークション会社であるサザビーズの日本法人の社長で、現在は独立してアートを取り扱うエージェントとして活躍しています。

長年にわたってアートに関わり、外部から見えづらい世界の奥の奥まで知っている著者だけあって、豊富なエピソードとともに現代のアートビジネスのダイナミックな側面を分かりやすく教えてくれます。個人的には、なぜここ10年で現代アートの価格が高騰したのか、50年前の印象派の興隆と対応させる形で理解できたことが最も大きな収穫でした。

欧米ではアートは完全にグローバルかつ巨大なビジネスとなっています。購入者として著名な人物たちも著名企業オーナーやファンドマネージャー、さらにはセレブリティなど社交界の大物たちが顔を揃えています。

ゾゾタウンの創業者である前澤さんが、バスキアの作品を62億円で購入したことで欧米のセレブリティの仲間入りをして、レオナルド・ディカプリオにコレクションを見せてもらうために彼の自宅を訪れたというエピソードをメディアに目をしましたが、本書をきっかけに欧米社会でのステップアップに必須のアートについての知見を深めたいと思います。

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ギリシャ人の物語2

ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

★★★★

全15冊からなる「ローマ人の物語」があまりに名高い塩野七生さんのギリシャ人の物語の2作目です。前作が、ペルシャ戦役が中心であったところから、本作では民主主義の巨人ペリクレスを中心として、アテネにおける民主制に焦点があたっています。

ローマ人の物語はもちろん、ルネッサンス期に関する著作など、塩野さんの作品はほぼ全て読破しています。厳密に歴史を追っていくのではなく、まるで眼前に展開されているかの如く、数百年/数千年前のドラマが生き生きとした人物描写により展開されるので、歴史の流れがすっと頭に入ってきます。

同時に、人の世の物語は時代を超えた普遍性があり、読後に様々なことを考えさせられます。まるで、今の世界の流れを予測していたように、本作では民主主義により興隆したアテネが民主主義により没落していく姿が描かれています。誰しもトランプ大統領の米国や、ブレグジット後の英国の行く末と重ね合わせる部分があるでしょう。

ただ、こうした憂鬱な読後感だけでありません。塩野さんはローマ人の物語のカエサルやルネッサンス期のチェーザレ・ボルジアに代表されるように、自身が敬愛する人物の描写が白眉ですが、本書にはアルキビアデスという魅力的な人物が登場し、彼に関する描写はやはり冴えわたっています。

次回作は1年後となるようですが、アレクサンダー大王が登場するようです。麒麟児が大好きな塩野さんが、この人類の歴史上でも最高の部類の麒麟児をどのように描くのか今から楽しみです。

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ウォール街のイカロス

ウォール街のイカロス─小説ヘッジファンド

レベル3 ★★★

金融業界で長く活躍しながら、このブログでも紹介した名著「ヘッジホッグ」など金融ノンフィクションを残したバートン・ビッグスによる唯一の小説です。

モルガン・スタンレーに30年以上在籍し、さらにその後もヘッジファンドを立ち上げた著者だけあって、その作品はどれも金融業界に深い洞察を元に、特にマーケット関係者には深く心に突き刺さります。

黒人と白人のハーフというウォール街のマイノリティを主人公に据えた本作品も、ヘッジファンドを中心とした金融業界についてその面白さ、刺激性、そして残酷さということが良く伝わる、迫力ある内容となっています。

ただ、小説としての出来はあまり良いとはいえません。ITバブル前夜からリーマンショック後までが本書の舞台となりますが、時系列が前後することが多く、また登場人物の心情も伝わってこないこと場面も見られ、ストーリーがうまく流れていません。

結末もイカロスというタイトルから想像できるようにハッピーエンドではありませんが、もう少し救いがあっても良いと思いました。この著者の本質はやはりノンフィクションにあると感じました。

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論語と算盤と私

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

★★★

中々、仰々しいタイトルですが、30そこそこという異例の若さで斜陽だったミクシィの社長に就任し、短期間での立て直しに成功して、現在はスタンフォード大学のMBAの講師として活躍している朝倉さんが書いた、テンポの良い企業論です。

本書の中でも朝倉さんの異例の経歴については紹介されていますが、中学卒業後プロのジョッキーを目指してオーストラリアに渡るが身長が伸びすぎたために断念し、その後猛勉強により東大法学部に進学し、学生中に起業した後にマッキンゼーに入社して、再びスタートアップに戻った後にミクシィの社長になるという激動の内容です。

私にとっては、朝倉さんはマッキンゼー時代の後輩にあたり面識がありますが、上記の波乱のキャリアの苦労を感じさせない飄々とした好青年です。本書も、彼の人柄に沿う形で、様々な立場から企業を見てきた人ならではの多様な視点から、明快にあるべき企業の姿が語られています。

本書に書かれている内容は伝統的な日本の大企業観とは相いれないものあるでしょうが、少なくともグローバルのビジネスシーンでは当たり前とされているものです。ただ、語り口にこれまでの「海外ではXXX」という上から目線のコンサルタント的押しつけがましさが一切なく、日本の上場企業のトップとしても苦労した朝倉さんだけあって、すっと心に入る形で提示されています。

若い人にとってはキャリア論としても貴重な示唆に富むでしょう。様々な分野に若くして該博な知識を持つ朝倉さんならではの骨太な企業論、キャリア論をぜひ特に若い世代の方に読んでほしいと思います。

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コンテナ物語

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった

★★★

原著が出版されたのは2006年で、邦訳が出されたのも2007年とかなり前の本ですが、知人から薦められて最近読んでみましたが、十分今でも参考となる内容でした。経済のグローバル化が進み、さらにeコマースの普及により船で運ばれる貨物量は増加の一途をたどっていますが、それを可能にした存在としてコンテナに焦点をあてています。

本書にもコンテナを主題とした初めての書籍であるという表現がでてきますが、当たり前の存在過ぎてさらにローテクであるために、普段全く注目されないコンテナという存在が、実はグローバル経済に大きく貢献した革新的な発明であったことがよく分かります。

コンテナが登場する以前は、多種多様な品物を船で運ぶ際に、港で働く肉体労働者が手作業で荷物を仕分けしていました。港湾労働者は世界中で既得権益の塊で、独自の組合により仕事が配分されていた為に生産性が低く、さらに盗難や賄賂といった犯罪も横行していました。

それがコンテナ登場により格段に効率化されたプロセスが、港湾労働者や海運会社、港湾管理会社、さらには荷物を運びたいクライアントなど様々な視点から描かれています。ともすれば今のAIに代表されるように目新しいテクノロジーばかりに世の中の注目が集まりがちですが、コンテナという極めてローテクで地味なプロダクトの背景にも、これをうまく活用すれば多大な経済的なメリットが得られると努力した傑物たちが居たというエピソードはとても刺激的でした。

コンテナの処理能力で見ると、世界の上位10港は全て日本以外のアジアの都市の港が占めています。私が普段活動している東アジアの経済の繁栄に欠かせないコンテナというプロダクトに対する思い入れが本書を読んで強くなりました。

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国家とハイエナ

国家とハイエナ

レベル3 ★★★

経済小説の泰斗、黒木亮氏の最新作は国家と投資ファンドの攻防を描いた作品です。この小説の主人公のモチーフは、エリオットマネジメントのポール・シンガー氏ですが、彼は「世界で最も恐ろしい投資家」という異名で知られています。

長くバンカーとして活躍し、現在も世界最高の金融都市ロンドンで暮らしている著者だけあって、ハイエナファンドが新興国の債券を購入して、米国・英国での訴訟活動を駆使しながら、決して裕福でない新興国から巨額のリターンをどのように搾り取るのか、その手法が克明に描かれています。

本書の主人公であるサミュエル・ジェイコブスは、モチーフとなったポール・シンガー氏の実績をなぞるかのように、アフリカ諸国やアルゼンチンなど新興国からその圧倒的な法律についての知識と、グローバル大手ローファームのネットワークを活かして次々と巨額のリターンを得ていきます。

ただ、この小説を興味深くしていることは、強欲なファンドマネージャーだけでなく、その真逆の立場にあるファンドによる貧困国の搾取を禁じるために活動しているNPOや、ファンドの一社員など様々な立場から、この華麗な搾取劇を描いていることです。多様な立場の登場人物により、巨額のマネーが飛び交うグローバル金融市場の過酷さと、ある種のむなしさがうまく描かれています。

ロンドンやニューヨークといった金融都市を抱えている英国・米国の強みは、世界中の資金を自国に集めていることで裁判に勝ちさえすれば、すぐに自国にある訴訟先の金融資産を抑えて、リターンを確定できることです。

日本の投資ファンドには逆立ちしてもできない芸当であるだけに、本書を読むとアングロサクソンとユダヤ人が作り上げたグローバル金融のプラットフォームと、そのうえで勝ち続ける巨大ファンドの凄さがよく分かるでしょう。

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カジノとIR

カジノとIR。日本の未来を決めるのはどっちだっ! ?

★★

世の中ではハイパークリエイターという肩書や、沢尻エリカさんの元旦那といったところばかりがクローズアップされている著者の高城氏ですが、パーマネントトラベラーとして世界中を旅して各国の最新事情に詳しく、東京でのカジノ解禁についてのパネルのメンバーであったこともあって、世界中のカジノの実態がコンパクトにまとまっています。

トランプ次期大統領との会談の直後に急ピッチでカジノ法案が可決されたために、その背景にあるメカニズムについて色々なうわさが飛び交っていますが、めまぐるしい展開から議論が十分ではないとカジノに対して批判的な国民が過半を占めているようです。

本書では日本で今後どのようなカジノリゾートを作っていくべきか、最もお手本になると著者が考えているシンガポールのIR(統合型リゾート)を中心に、各国のカジノの展開について網羅的にまとめられています。日本では、そもそもIRがどんなものか知っている人が少なく、これ以上ギャンブル中毒者を増やすことにつながるという、IRの本質とはあまり関係ない議論ばかりが先行しています。

シンガポールで暮らしていて、マリーナベイサンズというIRによりシンガポール経済が活性化している成功例を目の当たりにしているだけに、今後の日本のカジノのあるべき姿について考える上では本書の内容は最低限の議論のベースとして把握しておくべきでしょう。

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原油暴落の謎を解く

原油暴落の謎を解く (文春新書)

★★★

原油価格の指標であるWTI原油は、2014年前半に1バレル110ドルに迫っていたところから急落し、16年前半には一時20ドル台まで下がりました。そこから、反発に転じて現在は50ドルをわずかに下回るレンジで推移しています。

原油は、全てのコモディティ(商品)の中で取引量が最大です。その原油価格が上記のように2‐3年でここまで激しく動くことは地上の何十億人の生活にも大きく影響します。本書は原油価格の形勢メカニズムについて、最新情勢はもちろん、原油についての人類の歴史的な歩みについてもコンパクトにまとめられています。

日本で原油価格をテーマとした書籍には、大国や産油国の地政学的な思惑や、国営石油会社・スーパーメジャーといったエネルギー企業の陰謀といった怪しげな言説が目立ちますが、本書は原油に関する実務に長く関わった著者ですから、客観的な事実に基づいて信頼性の高い議論が展開されています。

米国の競争力の源泉として、金融やITについての論考は多くありますが、エネルギー産業も勝るとも劣らないほど、米国が突出して強いことが本書を読むとよく分かります。特に、シェールガスやシェールオイルといった非在来型のエネルギー資源をなぜ米国だけが独占できるかについての本書の記述はとても勉強になりました。原油という身近な存在ながらも、その価格形成はほとんどの人にとって不可解な商品について、勉強を始める上で最適なスタートラインとなる良書です。

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世界をつくった6つの革命の物語

世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史

★★★

タイトルを見ると最新の科学技術の話と思うかもしれませんが、本書は人類の歴史を通じて重要な発明を6つ選びだして、発明されるまでの経緯とその発明が社会にどのようなインパクトがあったのか、超長期の歴史に渡って解説されたスケールの大きい書籍です。

その6つの発明とは、「ガラス」、「冷たさ」、「音」、「清潔」、「時間」、「光」です。ガラス以外は全て、トピックに関連する複数のテクノロジーについて解説されています。例えば冷たさであれば、最初は氷を何とか保存して暖かい地域に持っていくことで冷却を実現していましたが、冷蔵庫やエアコンなど人工的な冷たさの発明とともに、どのように新しいテクノロジーに移行し社会にどのような影響を与えたのか、1つのトピックを軸に長い歴史がコンパクトにまとまっているので、テクノロジーの持つインパクトの大きさがよく分かります。

本書を読んで印象的なのは、新たなテクノロジーが誰か1人の大天才によって突発的に見つけられるということはほとんどなく、多くの人による試行錯誤の歴史で徐々に進化していくということが分かります。印象的なのはエジソンによる電球の発見の記述で、彼が現代の起業家にも通じるセルフプロデュースに優れていたため、後世の人は電球をエジソンの功績と認知していますが、それは間違いではないものの、他にも多くの人が発明に貢献していたことが分かります。

ともすれば、テクノロジーの発展というと人工知能など目新しいIT関連のトピックばかりに目が行きがちですが、人類はその長い歴史の中で様々なテクノロジーを多大な苦難の上に創り出し、それによって周囲の人はもちろん、発明者も思いもしなかった形で社会への影響を与えてきたことが、本書を読むと分かります。テクノロジーが持つより本質的な価値に思いを馳せるようにしてくれる、テクノロジーへの愛が詰まった骨太の良書です。

 

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